「思いつき」を「ビジネス」へ – 刺さるアイデアのつくり方 –

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先週公開の記事 >「想いや志を、事業へ成長させるには?」

では、スタートアップを

1. アイデア期(志やアイデアに気づき、プロジェクトをつくる段階)

2. ビジネス期(価値と課題を明確にし、実際に試作品を検証する段階)

3. ビジネス検証期(市場に受け入れられる製品・サービスに改良していく段階)

という三つのステージに分類し、特に「アイデア期」における成長過程についてお伝えしました。

今回は、アイデアをビジネスにする段階である「ビジネス期」に焦点を当てていきます。

 

ある程度具体的なアイデアができたら、それをビジネスとして形にしていくために、試作品をつくり、ユーザーに届けるまでを行うのがこのビジネス期です。

ビジネス期はさらに細かく次の三つのステージから構成されます。

1. アイデアを磨く

2. 試作品と試行

3. ユーザーテスト

 

1.アイデアを磨く

現在のアイデアからより良いサービスをつくるために、ここではアイデアの磨き方を三つご紹介します。

 

①ペルソナづくり

「ペルソナ」とはあなたの商品、サービス、製品を使い、好きになってくれる象徴的な顧客像を意味します。

ではそもそも、なぜ顧客像の設定が必要なのでしょうか?

それは具体的な一人を思い浮かべてサービスを設計することで、顧客の本質的な欲求に合わせたサービス設計を行うことが可能になるためです。

象徴的な顧客像をより細かく具体化していくことで、マーケティング上の利点が多く生まれます。「経済において、全体の数値の大部分は、全体を構成するうちの一部の要素が生み出している」というパレートの法則に則り“2割の象徴的な顧客像を浮き彫りにし、そのターゲットに満足してもらえるサービスを作ると、8割の需要をカバーできる”という考えが背景にはあります。

ターゲットを絞ることが重要だというと、「顧客が減ってしまう」と不安にかられる方も多いと思います。

しかし、現代では物も情報も溢れており、顧客のニーズ・課題も多様化しています。そんな中で「万人受け」するものは訴求力が弱く、ターゲットを絞って専門化した製品やサービスには負ける可能性が高くなってしまうのです。

 

②UXについて知る

「UX(User Experience)」とは「ユーザーが製品・サービスを通じて得られる体験」を指します。「デザインがキレイ」「商品のクオリティが高い」というようなサービスの質に関わる部分もUXですし、サービスを利用する一連の行動の中で、ユーザーが感じたこと全てがUXであると言えます。

UXが必要な理由は主に三つあります。

 

■顧客の選択肢の増加

現在は簡単にサービスを作れてしまうフレームワークなどにより、多くの企業・または学生でもWebサービスを手軽に展開できるようになりました。

今まではどちらかというと供給者優位でしたが、現在は多くの競合との差別化をはかる必要があります。

その為、ユーザー中心に設計しユーザーに心地よい体験をしてもらうことでサービスに価値を感じてもらうことが必要となっています。

 

■ビジネスモデルの変化

ビジネスモデルにも変化が生まれています。

従来であれば、月額課金性のビジネスモデルが多く、最初に「如何に有料会員登録をさせるか」が重視されていました。

しかし、現在は月額課金性のビジネスモデルだけでなく、フリーミアム(=Free+Premium ベースのサービスや製品は無料で提供し、さらに高度な機能や特別な機能については料金を課金する仕組み)のビジネスモデルが浸透しています。これにより、「如何に有料会員登録をさせるか」ではなく、「如何に継続的にサービスを使ってもらうか」が重視されるようになってきています。

 

■利用体験の拡散

現在はSNS等で誰でも簡単に利用体験をシェアできるようになっています。

その為、ユーザーの利用体験が悪いサービスの悪評はすぐに広まってしまいます。逆にユーザー中心に設計され、ユーザーが心地よい体験をすることができるサービスはすぐ拡散してもらえるようになったのです。

 

③サービス前後の設計

サービスを利用している時のUXだけでなく、その利用前UX、利用後UX、累積UXまでを想定する必要があります。

ユーザーに対してただ単にモノを提供するのではなく、文脈を含めたコト(ストーリー)を提供する視点を持つために全体の設計が必要になってくるためです。最適な利用前、利用後のUXがなければ良いソリューションを持っていたとしても効果が薄い場合があります。カスタマージャニーを用いることで、サービスにおけるすべての段階でのUX(ユーザーの体験)を検討することができます。

カスタマージャーニーとは、顧客がどのように商品やブランドとの接点を持って認知し、関心を持ち、購入や登録に至るのか、というプロセスを「顧客の旅」と例えた言葉であり、それをツールとして用いてサービス設計をするフレームワークです。

このカスタマージャーニーをパターン化し、可視化して分析することで、マーケティング活動の最適化をはかることが重要であり、非常に注目されている分野です。サービスごとに理想の動線は異なってくるため他のサービスは参考にとどめておき、独自のストーリーを構築しましょう。伝えたいメッセージを不足なく伝えることや予約などを顧客に不便を一切感じさせずに導くためにUI・UXという概念が注目されています。

 

”ものづくりからコトづくり(体験づくり)”の時代へと変化している今、顧客の背景を理解した上でコト(体験)を提供していかなければ、顧客からの支持は得られなくなっています。

 

2.試作品と試行(プロトタイピング)

生まれたアイデアの価値がどのようなものであるのか判断する際には、開発者ではない第三者の客観的な意見が必要になります。その時には資料で説明するだけではなく、実際に仮想ユーザーとしてサービスの一部を体験できるようにすることで実践的な意見を聞くことができます。

また、チーム内における認識のすり合わせや意見を引き出す際にもプロトタイピングは有効です。それぞれが漠然としたイメージだけでプロジェクトを進めていくと、思わぬところで意見や前提の食い違いが発生します。それを避けるためにも早い段階で一度形にしておくことが極めて重要です。この段階の試作品では、最低限のコンセプトや実現したいモノ・コトが伝われば十分で、大きくコストを使う試作品はまた後の段階で作成します。

一つの精度を上げるよりも安く、早く、何度も行う事が大切です。下記にプロトタイピングを行う方法を紹介します。

 

■製品・体験型サービスの場合

・紙芝居:画用紙や模造紙にサービスの内容やイメージを描き、順番に見せていく方法。ユーザーがどのような反応をするかまでを描く。

・紙工作:紙やのり、段ボールや粘土などを使って製品を作る方法。紙芝居や即興劇と合わせて活用するとメッセージが伝わりやすくなる。

・即興劇:寸劇によってサービスを伝える方法。提供するサービスがどのような影響を人に与えるのかがわかりやすく伝わる。

・動画:簡単な動画で伝える方法。CMなどを参考に簡単な編集で短時間の動画を作る。オンラインで意見を聞く時に有効。

 

■WEBサービスの場合

・画面スケッチ:どのような画面を表示して何を見せていきたいのかを紙に書く。無料のオンラインツールを使う前に一度書きおこすべき。

Prott/inVision/Pixate:これらの無料ツールを使ってプロトタイピングすることで、安価かつ早く動作の確認まで行うことができる。画面の遷移やアニメーションを使って表現することも可能。完成度は高いが画面スケッチに比べると手間がかかるため、スケッチを行った後に有効なアイデアのみこちらのツールで具体化していく。

 

試作品(プロトタイプ)の参考事例

現在世界中で使われているサービスがどのようなプロトタイプから生まれたのかを紹介します。プロトタイプがどのような形や精度であっても、将来的に社会を変え得るサービスになるという参考になります。

 

『Twitter』の場合

Twitterの創始者であるジャックドーシーが2000/5/31にスケッチしたプロトタイプ時は当時stat.usという仮名で作られていましや。このようなスケッチから誰もが一度は使ったことがあるTwitterが生まれています。注目してほしいところはアイデアをイメージしそのリアリティや価値を汲み取るためにはまず見える形にすること。まずはラフに描いてみることが重要であるという点です。アイデアが固まるまで、文字や頭の中で検討を続けるのではなく、ビジュアルにしてみることで、自身が何を創ろうとしていたのかをイメージすることが可能となります。

 

『iPhone』の場合

 

最初期のiphoneのプロトタイプは配線や基盤も見えてしまっている状態ですが、このようなプロトタイプから大ヒットした製品が生まれたということを紹介します。ABテストを行っている真ん中の画像はすでに持ちやすさや製品のイメージができるような機能を持っています。

 

3.ユーザーテスト

プロトタイプを実施した時に特に重要なのが「どんなデータを集めておくのか」ということです。目的のデータに応じて調査や分析の方法が変わってくるため事前に目的と調査方法を検討しておきましょう。

ただ試行するだけでは意味がなく、次の試行をどう改善していくかが非常に重要です。そしてこのアイデア検証の段階ではこちらが想定していないような価値が発見される可能性もあるため定性調査を主に実施していくべきですが、同時に客観的な数値が欲しい場合は定量調査を行います。アンケートに記入してもらい、その結果をもとにインタビューを実施するといいでしょう。

 

■定量的調査

定量調査とは、人数や割合、傾向値などの何かしら明確な“数値や量“で表される「定量データ」で集計・分析する調査方法です。代表的な定量調査は、「アンケート」。質問項目に明快に回答できる設問で構成され、これらを集計すると設問ごとに必ず明確な数字でデータがアウトプットされます。

 

■定性的調査

定性調査とは、個人による発言や行動など、数量や割合では表現できないものの“意味”を解釈することで、新しい理解やヒントにつながる「質的データ」を得るための調査方法です。代表的な定性調査方法として「フォーカスグループインタビュー」やマンツーマンで行われる「ユーザーインタビュー」などがあります。

これには、調査の目的に応じて「検証型」と「発見型」の2つのアプローチ方法があります。

調査したいことが、おそらくこのようなニーズがあるだろうと仮説が立てられ、それを検証する必要があるような「顕在レベルのユーザー理解」には、検証型のアプローチが適しています。つまり、数値的に明確に検証すべきものの場合には、定量調査を用いた検索型アプローチで調査を設計することが適しています。

調査したいことが、ユーザー自身もそのインサイトを認識しておらず、発見する必要があるような「潜在レベルのユーザー理解」には、発見型のアプローチが適していると言えるでしょう。つまり、質的データを集めて、チームが文脈的かつ意味解釈を行うことで、新たな発見やインサイトを得たい場合には、定性調査を用いた発見型アプローチで調査を設計していきます。

 

以上が、ビジネス期の流れです。

ビジネス期を終え、次のビジネス検証期では、製品・サービスと市場というより広い視点で考えていくことになります。

その準備段階としてこのビジネス期では、まずサービスを届ける具体的な顧客を思い浮かべながら、その人にとって価値あるものをつくるためにはどうすれば良いかをひたすら考え、試行してみてください。