whyが”評価されない”サードプレイスへ -Coordinator 瀬戸 昌宣[前編]-

KSPArticle, Interview

──アメリカの大学研究員という立場からかなり大胆にキャリアチェンジをされたんですね。

もともと学生への指導経験もありましたし、教育のバックグラウンドと実践はあったんですけど、そこに事業が絡むとなると、非常に難しかったですね。これまでのお金さえ持ってくれば良いという研究費を取ることよりも、ずっと全体を見なくてはいけなくなりました。事業を行う上でお金を取ってくる、人を雇う、そして地域住民の思いを汲むことをバランスさせていく難しさを感じています。ただ、それを辛いなとは感じつつも、やはり面白さが勝ります。

今のチームは、みな専門分野で実力がある。しかし、主義主張はバラバラ。もちろん、自分に似た人だけを集めた方が色々とやりやすいのでしょうけど、それでは化学反応は起こらないと思っているので。一つの実験です(笑)

 

「サードプレイス」としてのKOCHI STARTUP PARK

うちのチームには「私がこうしたい」っていう人たちが集まってきているんですよね。KOCHI STARTUP PARKもそういうコミュニティになっていってほしいなと思っています。すごく雑多なコミュニティの中で、起業・創業が生まれてきたら最高に面白いだろうなと。そして、そういうコミュニティが高知の中でたくさん生まれてきてほしいですね。

高知の人たちって、良い意味で、すごくノリが良いと思います。ただ一方で、今風な言い方をすれば若干グリットが足りないかなとも感じます。

*グリットとは

「グリット」(grit)とは、「困難にあってもくじけない闘志」「気概」  「気骨」などの意味を表す英語で、成功者に共通の心理特性として近年注目されている、「やり抜く力」のことです。心理学者でペンシルヴァニア大学教授のアンジェラ・リー・ダックワース氏が、「社会的に成功するために最も必要な要素は、才能やIQ(知能指数)や学歴ではなく、やり抜く力である」という「グリット」理論を提唱して以来、教育界や産業界をはじめさまざまな分野で大きな反響を呼んでいます。(出展:https://jinjibu.jp/keyword/detl/825/)

見ていると、結局ノリでスタートすることはできるんだけど、責任の所在を明らかにしないことによって、始まったものの宙ぶらりんになっている事業が非常に多くある印象です。

「こういうことやりたい」という人たちはいるけれども、実際にきちんと始めて続けている人は、都市部や、ましてやアメリカと比較すると少ないですね。

また、これは高知特有というより日本全体の話だと思いますが、「トライアル&エラー」が許されにくいので、コミュニティの結びつきが強いからこそ、失敗した時のダメージがきついなと思っています。

だからこそ、KOCHI STARTUP PARKがそういう時のためのサードプレイスとして機能できれば、起業家は生き残っていけるのかなと考えています。

僕がやっている教育事業も同じで、とことん場づくりなんです。何かを教えるっていうことは基本的になくて、マイプロのように、とにかく問答をする。そうすると、人って自然と成長するようにできてるんですよね。

 

場の空気を持続させるための仕掛け

場づくりという意味ではもう一点大切だと考える要素があります。

KOCHI STARTUP PARKのサロンは、すごく良い場と空気感ができていると思っているんですが、あの場所を一歩出ると、元に戻ってしまうんですよね。

改修中のうちの事務所は「あこ」って言う場所なんですけど、「あこ」って土佐弁で「あそこ」って意味なんですよ。要するに、使う人によって意味が決まるんです。子供たちであったり、パパさんママさんだったり、もしくはセカンドキャリアに入った人であったり、それぞれによって「あこ」の意味は変わります。

「どこ行くが?」と聞かれた時に、「あこ」は、ある人にとっては自習室に、またある人によっては図書室になります。

その場所でマイプロもやっているんですけど、「あこ」の中に、6畳くらいの小さい部屋をつくっていて、その中でみっちり空気感をつくってマイプロに取り組むんですけど、マイプロを終えてそこから出たとしても、そこはまだ「あこ」の中なので、空気感が失われないまま勉強や仕事に戻れるんです。

つまり、場を出た後に、その状態を持続させ、その状態でアクションをするっていう経験をさせるところまでを含めてデザインをする必要があるわけです。

もちろん、普段の生活に戻ったら、その状態からは戻るんだけど、KOCHI STARTUP PARKのサロンに来て、僕らとマイプロをやることで、その状態を体感する時間が人生の中で増えていくと、それがだんだんと日常に塗り替えられていくんです。

そうしていくとどこかで、「じゃあ起業しよう」っていうティッピングポイントが来ると思うんですよね。

 

──非常に興味深いですね。会が終わった後の感覚を疑似体験させておくことで、本当に出た後も、そのギャップが起きないようにするというわけですね。

その通りです。

やはりKOCHI STARTUP PARKでマイプロを軸にするというのは本当に価値あることで、後は、それが評価されるべきじゃないっていう部分をどうやって伝えていくかだと思います。

例えば、売上や事業計画の緻密さみたいなものは評価対象になると思うんですが、ここで、自分の”WHY”や“WANT”、”WILL”が評価されているわけではないっていう安心感がKOCHI STARTUP PARKの中に充満すれば、とてつもないことになるのかなと思っています。

 

──そういう意味では、お話しいただいたように、KOCHI STARTUP PARKはそういう時の安全地帯になると思っています。全力で表現したものが市場から突き返された時に、もう一度ここで煮詰め返してみようという風に機能していくと良いですよね。

 

次回は、瀬戸さんのインタビュー[後編]を掲載いたします。「高知という土地で事業をスタートする」という点を中心にお話を伺いました。お楽しみに!

 


瀬戸 昌宣/NPO法人SOMA 代表理事

1980年 東京都生まれ。農学博士(農業昆虫学)。桐朋高校でバスケットボールに打ち込む傍ら、オーストラリアに留学。大学時代の米国留学を経て、米国コーネル大学にて博士号を取得。コーネル大学ニューヨーク州立農業試験場で博士研究員として研究と教育に従事。2016年から土佐町役場に勤務し、地域の教育に参加。2017年5月にNPO法人SOMAを設立し、地域の学校教育・社会教育の企画・運営をしている。林業を教育素材として、総合的な学習ができる杣の学校の設立を準備中。