ローカルな価値観の「半歩」先を行く -Coordinator 瀬戸 昌宣[後編]-

KSPArticle, Interview

KOCHI STARTUP PARK

ローカルな時間をハックしていく

──では少し話題を変えて、KOCHI STARTUP PARKへの期待や想い、今後のビジョンを伺えますか?

前にも話しましたけど、完全にベクトルの違う多様な人たちがぐちゃぐちゃに集まっているということがすごく大事だと思っています。それを担保するためには安心・安全が必要で、さらにそれを担保するためにはマイプロ的なアプローチを通して、お互いを最大限尊重する必要がありますね。

人の頭の中なんて究極的には理解できないので、理解する必要はないんだけれども、「そういう人たちがいるということが当然で、それでいい」という場にKOCHI STARTUP PARKがなれば良いなと思います。

あとは、前の質問と重なりますが、高知の気質にKOCHI STARTUP PARKそのものが時間をかけて順応していけたらと思っています。そうしていくことで、僕らの想いと参加者から出てくるものがより噛み合ってくると思うんですよね。

今回のプログラムに関わっているGOB-IPは東京で事業創造を行ってきて、それが高知に来たら、絶対にそれまでの時計の進みは合わないわけですよ。そこで、合わせるっていうのが一つの手なんだけれども、逆に、参加者の人たちが東京のクロックを感じられるっていう部分もあるんですよね。

だから、時計の早さを変えずに、倍数になっていれば良いかなと思っていて。こっちの針が五回動く間にもうこっち一周してましたみたいな。それで辻褄を合わせていって、このスピード感が東京で勝負するのであれば必要だよね、高知だったらこれくらいだよねっていうのを感じてもらって、段々と、高知県で東京のスピード感を再現できるようになれば良いなと思っていますし、KOCHI STARTUP PARKがその種まきをできれば素晴らしいと考えています。

時代は変わっていくけど考え方は変わらずという中で、それが乖離しすぎてしまったらそこを繋げるのは難しい。だから、それが勝手に変わっていくようなハッキングを僕らがしていく必要は絶対にあって、そういう意味では僕がこの一年半やってきたことも行政ハックなんです。

 

──時間をハックするというのは、おっしゃる通り必要なことですね。

それがどこかでマイプロそのものと一時的に矛盾しても良いと思っているんです。

僕の話で言えば、よく本質的な学びっていうことを言うんですけど、人によっては基礎学力はそこそこで特化していけば良いっていう人がいるんですよね。だけどやっぱり基礎がないと、特化させるにも最後の伸びが全く違うんですよ。だから今の受験勉強的なものを完全に否定するっていうものでは全然ないし、例えば、簡単に事業計画書書いてっていう時に、それに一週間かかっていてはダメなんですよ。むしろそこで三分でピッチするくらいじゃないといけないわけで。

そういうプッシュは絶対に必要だと思っていて、そうすると、マイプロでじっくりと自分の想いと向き合っていくっていうことと一見矛盾しているようだけど、それらはループして繋がっていくんですよ。これって多分、KOCHI STARTUP PARKの中でしかできないことだと思うんですよね。

 

不安定を内包して先へ進む

──起業をすると、認知不協和みたいなものが生まれるタイミングはありますが、それを取り除いてはいけないということですよね。

そうですね。僕たちが服のデザインを見て、この色とこの色って補色になってないのになんかあってるんだよねって感じるのと同じで、僕は不協和音ってとっても大事だと思っています。

ベースになる和音があるからそれが不協和に聞こえるんだけど、じゃあその不協和と協和の境ってどこにあるのって言ったらグラデーションなわけですよ。ということは、不協和の中でも僕らはやっていけるし、そこでこそ化学変化が生まれやすいと思っています。

だから、事業の安定化っていうのはもちろん必要なんですけど、でもそれをやるからといって、事業そのものを磐石に安定させていったら多分そこが終わりの始まりなんですよね。

僕はよく友人から「お前はタンソコだよね」って言われるんです。タンソコっていうのは、短期間でそこそこ。笑

なぜ僕が短期間でそこそこにできるかっていうと、まず0→1のところが超楽しいわけですよ。で、1が10になる仕組みを考えるのも楽しい。その仕組みができた瞬間に、「はい、次」ってなっちゃうんですよね。笑

僕がやっている教育事業も、五年から十年を一つのスパンとして考えていて、何でかっていうと、関わってもそこからの伸び代はたかが知れている。だから、うちの事業が担えるような人財をこの地域で育てる、または外から来てうちの事業に関わってもらう人財に、それを渡していくっていう形が必要だろうと考えています。

もちろん今やっていることに100%向かうんだけれど、まだ始めてもいないのに次の事業について語れるような場所ってすごく大事だと思います。そうやって、うちの事業はどんどん幅が広がって、多様になっていきます。未完成の最前線に自分は関わっていると思うんですよね(笑)

これからは、プロジェクトベーストラーニングっていう風に言っているけど、プロジェクトベーストジョブになっていくと思うんですよ。「これやりたい人この指とまれ」で集まってきて、プロジェクトだから当然終わりがあって、終わったら「じゃあまたね」と。

個人の能力の最適化ってそれでしか成し得ないじゃないですか。あの人ずっとあの企業にいるけどもったいないなって人ってたくさんいるわけで。だから、そういう部分でのハブにもなれたら最高ですよね。

 

──では最後に、これからチャレンジしていく、またチャレンジに迷っているKOCHI STARTUP PARKの会員の方々へ向けてメッセージをお願いします。

KOCHI SATRTUP PARKに行こうかなと思っている人たちって、多分色々な勉強をしたり講演会へ行ったりしていると思うんですよ。それらのアクションそのものはとても大切なことだと思うんですけど、誰かの話を聞いたから何かが変わるわけでは一切無いんですよね。

やっぱりKOCHI STARTUP PARKでマイプロをやる時間では、たった何分かかもしれないけれど、必ず自分が当事者にならなければいけない。その当事者性がマックスで発揮される場所へ飛び込んでみなければ、本質的な変化の種を植え付けられないと思っています。

だからまずはKOCHI STARTUP PARKへ来ていただいて、その変化の種を自分という土壌にまいてほしいなと。その種まきが終わったら、KOCHI STARTUP PARKが用意しているプログラムで芽を出して、事業そのものを育てていく状態がつくれると思うんですよね。

みなさん、確かにいろんなアクションは起こしているし、学習はされていると思うんだけれども、「ただ聞く」「ただ学ぶ」ではダメで、学びって、自分で発した問いでなければ主体的なものではないんですよ。問題集をやるとか、与えられた問いを解くっていうのは、主体的に解いているようで、全体としては受動的な態度なので、いかに主体的に自分で動く場を増やしていくかが大切です。

そういう意味では、KOCHI STARTUP PARKはその部分を毎回確実に担保してくれると思うので、ぜひそれを一度体験してほしいです。それを一度体験いただければ、僕らが発信しているコンテンツの意味も必ずご理解いただけると思っています。

 


瀬戸 昌宣/NPO法人SOMA 代表理事

1980年 東京都生まれ。農学博士(農業昆虫学)。桐朋高校でバスケットボールに打ち込む傍ら、オーストラリアに留学。大学時代の米国留学を経て、米国コーネル大学にて博士号を取得。コーネル大学ニューヨーク州立農業試験場で博士研究員として研究と教育に従事。2016年から土佐町役場に勤務し、地域の教育に参加。2017年5月にNPO法人SOMAを設立し、地域の学校教育・社会教育の企画・運営をしている。林業を教育素材として、総合的な学習ができる杣の学校の設立を準備中。