理学療法士が立ち上げた「働く人の健康づくり」ーーWorkth代表・橋本貴紘

KSP Article, Interview

過去にKOCHI STARTUP PARKの各種プログラムに参加し、現在では自身の事業を立ち上げている橋本貴紘(はしもと・たかひろ)さん。橋本さんは、いかにしてアイデアを事業立ち上げまで推進したのでしょうかーー。

▼目次

  1. 理学療法士が直に企業へ入り込む「Workth」
  2. 治したくても仕事に介護……相談相手もいない
  3. 働きながら健康になれる仕組み
  4. 「健康」意識で社内のコミュニケーション活性化も
  5. もやもやを段階的にビジネスへ
  6. 「ビジネス立ち上げまでの1本の道を知れた」
  7. 高知家ビジネスプランコンテストで最優秀賞
  8. トライアルを通じてサービスの価値を磨く
  9. 事業の拡大を目指して、さらなる仕組みづくり

理学療法士が直に企業へ入り込む「Workth」

私は今、Workth(ワークス)という事業を立ち上げてます。Workthは働く人たちが抱える病院に行くほどではない程度の腰痛や肩こりといった体調不良を、理学療法士が直接企業の中に入って解決策を提案するサービスです。

体がどうしても辛い時は病院などの医療機関への受診が必要です。軽い腰痛や肩こりも、マッサージなどに行くとある程度解消されるかもしれません。一方で、根本原因が生活の中にある場合、それが解決されない限り、症状は繰り返してしまいます。

こうした課題に対してWorkthでは、国家資格を持つ専門家である理学療法士が企業へ伺い、不調の原因を見つけてそれを取り除くための提案を行います。例えば、仕事中の姿勢や環境を撮影してお見せして「この姿勢や環境で仕事を続けているから、こういう痛みが出ているんですよ」とお伝えします。

他のだれかに体調管理を任せるのではなく、理学療法士から得た知識や技術を自ら身につけることで、将来にわたって継続的に自分の体をマネジメントできるようになることも、サービスの強みとしています。

治したくても仕事に介護……相談相手もいない

私自身は理学療法士として、Workthの立ち上げ以前に地域で訪問リハビリやデイサービスでの機能訓練、介護予防などの仕事をしていました。訪問リハビリは病院とは違い、直接利用者の自宅へ伺うため、家族を含めた利用者の生活を生々しく見ることになります。

利用者の家族に目を向けると、腰痛を抱えながら障がいのある子どもを介助するシングルマザー、ほぼ寝たきりの両親のために睡眠時間を削って介護をする男性……体に痛みを抱える人たちがたくさんいました。

「どうして病院や整体で直さないんですか?」と聞くと、「朝から仕事に行かんといけない。帰ってきたら介護をせんといけない。治したくても、時間もお金もない。そんなことは誰にも相談できん」と言われました。

 

働きながら健康になれる仕組み

体調不良でもそれを治療する時間やお金がない。それをだれかに相談することもできない。働いている人たちがこんな課題を抱えていることに初めて気付きました。私は理学療法士なのに、そういった人たちに対してサービスを提供することができないし、そういうサービス自体も世の中にほとんどありませんでした。この時の経験が「働きながら健康になれる」というWorkthのコンセプトにつながります。

「健康」意識で社内のコミュニケーション活性化も

ある企業の管理職の人は「うちの会社はほとんど健康だからあんまり参考にならないよ」と話していましたが、実際に問診をしてみるとほとんどの社員が何かしら体に痛みを抱えていたんです。自分以外の体の不調にはなかなか気付けないものなんですよね。「自分の体のことだけでなく、母親の介護のことまで相談できたのはありがたかった」との声もいただけました。

また企業に対して継続的にサービスを提供していると、みなさん健康という共通のキーワードを通して仕事以外のコミュニケーションをが増えたとの声をいただけたこともありました。当初想定していなかった効果ですが、嬉しかったですね。

もやもやを段階的にビジネスへ

2年ほど前、KOCHI STARTUP PARKの前身「こうち起業サロン」時代に、初めてプログラムに参加しました。その時はまだ自分の想いが漠然としていて、今のようなサービスは全く頭にありませんでした。プログラム中のレクチャーやアイデアのプレゼンを通して、自分の原体験を丁寧に振り返り、徐々に徐々に、自分のやりたいことを意識するようになったんです。漠然とアイデアが見えてきたら、今度はいろんなフレームワークを使って思考したり、メンタリングでアドバイスを求めたりを繰り返して、少しずつ今のビジネスの形をつくり上げていきました。

「ビジネス立ち上げまでの1本の道を知れた」

理学療法士のような専門職はその分野のプロですが、一方でビジネスのノウハウや経験はほぼゼロです。私自身、アイデアをどうやって形にしたらいいのか、見当もつきませんでした。それでもスタートサロンステップアッププログラムといったプログラムの流れに沿って考え、試行し、検証することで、今のサービスを作ることができましたし、ビジネスを立ち上げるための流れ、1本の道があるということを知れたことは非常に大きな学びでした。

高知家ビジネスプランコンテストで最優秀賞

高知家ビジネスプランコンテストの様子

3月に行われた「高知家ビジネスプランコンテスト」では最優秀賞をいただけて、これも自分の事業を加速させる1つのきっかけになりました。その場やそこからのつながりでいろんな方とお話ができたことで、サービスの解像度が急速に高まったように感じます。また、改めて今まで多くの方の協力で事業を作ってきたんだと実感できる機会になりました。

トライアルを通じてサービスの価値を磨く

今はトライアル価格で実際にサービスを使ってもらい、ブラッシュアップしている段階です。自分が価値があると思っていたことが実はちょっとズレていたり、自分があまり価値を感じないと思っていたポイントが実はユーザーにとっての魅力だったり、自分の感覚やリサーチだけでは掴みきれない部分があったので、トライアルの重要性は改めて感じています。

高知県庁でのトライアルの実施

Workthと同じようなサービスがないので、言葉でその価値を伝えることには苦労しています。もしお試しでもご利用いただける企業があれば、積極的にトライアルを進めていきたいと思っています。

事業の拡大を目指して、さらなる仕組みづくり

とはいえ、ここからはマネタイズもよりシビアに考えなければいけないですし、どう拡大させるかを考える必要も出てきます。そのためにも、まずは仲間を見つけたいですね。今でも事業をサポートしてくれるメンバーはいますが、Workthに100%コミットしてくれるわけではないので、一緒に走ってくれる仲間が増えたらいいなと思っています。理学療法士はもちろん、ITやマーケティングなどビジネス面が得意な人にも、ジョインしてもらいたいですね。

まだまだ自分が本当に救いたい人たちを救えているわけではないかもしれません。それでも、徐々にアプローチできている実感があります。また、Workthを通じて理学療法士たちが働けるフィールドも広げられたらと思っています。

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