高知に”起業への入り口”をつくる- 尾崎康隆-

高知県の産学官民連携・起業推進課にてKOCHI STARTUP PARK等の企画運営に携わっている尾崎さんに、高知における起業推進の取り組みや、KOCHI STARTUP PARKのサポート環境等を伺いました。

──ではまず、尾崎さんの普段のお仕事を教えていただけますか?

現在は、高知県の産学官民連携・起業推進課に所属していて、高知県内に、起業や新事業展開など新しいことにチャレンジしていく人たちをいかに増やしていくかを考えています。

もともとは昨年、起業に関する総合相談窓口という役割を中心として立ち上げをしたんですが、徐々に、起業や新たなチャレンジをする人たちのための環境づくりの企画へシフトしていきました。僕はその中で、 KOCHI STARTUP PARKやその前身である「こうち起業サロン」などを主として担当しています。

起業促進で高知の課題解決を

──高知県が起業に力を入れ始めたのはいつ頃からでしょうか?

現在の尾﨑知事が3期目になるんですけど、3期目の産業振興施策の柱の一つとして、平静28年度から「起業や新事業展開の促進」を掲げたのが本格的な始まりです。

高知県は、人口減少スキームに入っているので内需がどんどん減っていく、つまりマーケットがどんどん小さくなっていくわけですから、いかに県外に向けて売っていくかが大切です。官民協働によって地産外商戦略を柱とする産業振興計画の取り組みを通じて、県経済全体の底上げに向けた挑戦を続けてきています。

実際、各産業分野の産出額なども上向きになってきていたり、雇用状況が改善されてきていたりと成果が表れてきています。ただ同時に、これがこのまま続くかというと、環境の変容の部分で難しくなってくる。というのも、高知県の経営者層など、産業の中心を担っている人々は高齢化してきていて、次の世代への橋渡しが中々進んでいない。せっかく産業として伸びてきても、代替りのタイミングで、つくってきたものがまた小さくなってしまってはもったいないですよね。

この課題解決に向けて、知事は「地産外商の取組の成果を拡大再生産の好循環に乗せていく」、その好循環に乗せていくための“質の部分”を担保していくために、「起業や新事業展開の促進」を掲げました。

この課題解決に向けて、新たなビジネスへチャレンジする人たちを増やさなければという想いで、様々な取組を進めています。

安心してチャレンジできる環境の創出

先日開催されたデモデイの様子

──KOCHI STARTUP PARKはどのような経緯・背景で誕生したのでしょうか?

KOCHI STARTUP PARKの前身である「こうち起業サロン」というものを昨年の9月に立ち上げました。

4月から先述の窓口で起業相談を受けていましたが、その時に、「起業したい人はたくさんいるけれども、仕組みが追いついていないがために起業できていない」という当初の我々の想定が、実は違うのではないかということがわかってきたんです。つまり、そもそも新しいことにチャレンジしようとしている人の絶対数が少ないと感じたんです。

既存の創業支援の文脈では、どうしても、過去分析に対していかに事業をつくっていくかという目線になりがちです。このお店のこの立地ではこれくらいのお客さんが見込めて、回転数や客単価がこれくらいであればやっていけますよ、で判断してしまう。

ただ、これから新しい0→1にチャレンジしていくということは、その過去分析が通用しない世界に踏み込んでいくということです。

いわゆるローカルビジネスであっても、これから人口が減少していくであろう高知県などでは、いかに、縮小していくマーケットに対してビジネスを打っていくかを考えないといけないので、それって結局、色々なトライアルを繰り返しながら、これだったらやっていけるっていう形に近づけていくしかないですよね。それを実現できる環境がまだ高知県には整いきっていないと感じたんです。

だからこそ、安心してチャレンジできる環境をつくるために、「こうち起業サロン」ひいては「KOCHI STARTUP PARK」が生まれました。

起業のための助走環境を

──これまでの話に関連して、KOCHI STARTUP PARKで、尾崎さんはどのようなことを実現したいと考えていますか?

KOCHI STARTUP PARKでは、”will”や”want”、自分が本当にやりたいことをいかに事業化に結びつけていくか、とにかくそのサポートをしたいと思っています。あくまでもサポートに過ぎないので、結局はご本人がどれだけトライアルを重ねられるかではあります。ただ、あまりに不幸なトライアルではなく、どうせなら、もう少し効果的にチャレンジを重ねられる補助線をつくっていこうよという感覚ですね。

高知県で新しく事業をつくりたいということは、経済性よりも自分の中で実現したい世界観やビジョンがあるわけですよね。ただ、それが突き抜けていけない状況があるので、そこを変えていきたいわけです。

0→1という心が折れることの多いチャレンジの中で、折れないために必要なのは「絶対にこれをやりたい」という気持ちの強さの部分だと思います。

とはいえ、みんなどこかで気持ちが折れそうになることはあるじゃないですか。そんな時に、再起動できるかどうかは、同じような挑戦をしている仲間が周りにどれだけいるかだと思うんですよね。だからこそ、そういう環境をつくっていきたいと考えています。一方的な、教える/教えられるという関係性ではなく、より双方向的に、起業をしたい人の支えになれる場所をつくりたいですね。

9月に開催された「共創の場づくりアイデアソン」の様子

起業って、放っておいても勝手にできてしまう一部の人たちのためのものというイメージがあるように思います。実際はそういう人たちでも、たくさんの経営者や仲間に支えられながらやっていると思いますが、端から見ていると、突出した誰かが目立って見えてしまいますからね。

でも、何をやるにしても、助走って必要で、まずは緩やかなトラックを整備した方が、少なくともそこに参入していける人は増える。最初から全力疾走できるマッチョな人たちは素晴らしいんですけど、起業する人を増やしていこうって考えると、参入してもらうための取り組みが必要ですから、KOCHI STARTUP PARKが、そういう人たちにとっての入り口になれたらと思っています。

──最後に、KOCHI STARTUP PARKの会員さんに向けて、メッセージをお願いいたします。

起業や0→1のチャレンジは、最終的にはご本人の主体性に着地するものだと思っています。ただ、本当にそれを実現したいと思って一歩を踏み出せば、それをサポートするための仕組みは、かなり充実したものをつくったつもりです。

ですので、安心して新しいことにチャレンジして欲しいですし、少なくともKOCHI STARTUP PARKの場においては、単に、ビジネスチャンスの観点からできる・できないのお話をするつもりはないので、いかに本人のwill、やりたいという気持ちをサポートしていくか、そこを大切にしていきたいです。


尾崎 康隆

1981年高知県高知市生まれ。東京都立大学人文学部社会学科卒。東京都での民間企業勤務を経て、平成19年10月高知県庁へ入庁。土佐町での地域支援企画員等をへて、平成29年4月から産学官民連携・起業推進課。KOCHI STARTUP PARK等の企画・運営等を担当。

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