がん、障がいにも“化粧ケア”で自分らしさを:Sunotice代表・豊永純子

がん患者の方や高齢者、障がいのある方々へ、化粧を通じたケアを行うことがあります。こうした「化粧ケア」の事業化に向けて準備を進めるSunotice(サノティス)代表の豊永純子(とよなが・じゅんこ)さんにお話をきました。

「化粧ケア」とは?

私は現在、がんになられた方や、高齢者、認知症、障がい者の方々などに対して、お化粧を通じた外見的、心理的なケアを行う「化粧ケア」の事業化に向けて準備を進めています。

豊永純子さん

がんになると、抗がん剤の影響で脱毛したり、色素が沈着して肌が黒ずんでしまったりします。そういった方に対してお化粧を行い、しっかり寄り添いお話をお聴きすることで、外見のみならず、心理的なケアを行うのが化粧ケアです。がんの方でなくても、化粧をすることで気持ちが明るくなったり、積極的になったりすることはありますよね。

施設やご自宅へ伺って化粧をしますが、その後はお化粧を覚えてもらい、日頃ご自身でも行って頂くように促します。高齢者の方ですと、化粧を行うことが軽度のリハビリや認知機能の低下を抑制することにつながるとの研究結果もあります。

代替療法として医療・介護分野でも期待が高まっている

「化粧ケア」という呼び方は私が考えたものですが、「化粧療法」分野は最近注目を集めている「代替療法」に属します。医療行為ではありませんが、患者のQOLを維持、向上させる効果があります。

企業としては、「資生堂」がこの分野の研究開発等を長い間リードしています。また、がん患者へのケアについては、東京の国立がん研究センターのアピアランス支援センターが研究を進めています。このように、最近では学術的に効果も立証されてきている分野なんです。

一方で、化粧の効果を定量的に数値で測ることは難しく、保険が適用されていないなどの課題も残しており、今後いっそうの取り組みが求められています。

看護師として25年。並行してボランティアで1000人以上に化粧ケア

高知出身の私は、大学卒業後に東京で看護師の職に就きました。その頃、自分らしく生きるサポートを行いたいと思い、関心のあったヘアメイクアップアーティストを育成する学校に1年通いました。一度は看護師を辞めて映画のヘアメイクのアシスタントなどをしましたが、自分のやりたいメイクの仕事とはちょっとズレているように感じたんです。

その後、もっと心に寄り添うメイクを行いたいと思いメイクセラピーの存在を知り学びました。これなら自分の看護師としての知識や技術も活かせると思い、まずボランティアとして高齢者の方を中心にケアをしてきました。のべ1000人以上にはなると思います。

現在は、病院勤務から離れていますが、看護師歴は25年目になります。つい最近東京を離れ、2019年の1月に高知へ帰ってきたところです。

高知に戻ってからは、事業化を目指して、化粧ケアのトライアルや、関係各所への導入交渉などを続けています。

高知にUターン、事業化へ向けての手応え

トライアルの手応えも感じています。最近、ある施設で障がい者の方々へケアをする機会がありました。いつもだったら落ち着いて座っていられない方が、化粧中は穏やかに過ごせたり、笑顔になってくれたりと喜んでもらえる。継続的にケアすることでより大きな変化も見られるんじゃないかと期待しています。

また、がん患者さんの場合は、普段からご自身で化粧できるようにその方法までをお伝えします。今は、2人に1人ががんになると言われます。特に女性の場合、若くして乳がんや子宮・卵巣がんなどを発症する方も多い。

がんの治療と聞くと、長期で入院するようなイメージを持つ人もいるかもしれません。現在では、放射線治療、抗がん剤治療も会社に行きながら、治療する事が多くなっています。だからこそ、社会とのつながりを持ち続ける上で、外見や内面のケアはより重要な意味を持ちます。

人によっては、がんになったことで周囲から特別扱いされるのが苦しいと感じることもあります。そんな時、日々の化粧は自分らしくいられるための一つの方法として取り入れることができます。

化粧ケアが、医師や看護師と同じように……実現に向けたハードル

成果を感じる一方で、事業化へはまだまだ高いハードルを超えなくてはなりません。

化粧ケアの導入にあたっては、施設としても金銭的な問題を抱えている場合が多いです。これまで施設の方からお話を伺う中でも、「ぜひやりたい。でもお金を捻出するのが難しい」との声がありました。患者さんにとっても、化粧ケアは医療・介護保険適用外のため、全額自費で受けて頂かなくてはならず、金銭的な負担が重くなってしまいます。

だからこそ、化粧ケア自体の効果や実績を積み重ねていく必要があります。認知度が上がれば、患者さんやご家族側からのニーズの高まりに応じて導入のハードルも下がってくるかもしれません。

最近では、抗がん剤治療での脱毛用に、ウィッグ購入時に補助金が出るといった事例も増えてきています。患者さんを包括的にケアする中の1人として、医師や看護師と同じように、化粧ケアの専門家がいる。そんな状態を目指しています。

事業化を決意した理由は、ある遺影用のお化粧だった

このようなハードルを超えてでも事業化したいと思い至ったきっかけは、すい臓がんになられたある方との出会いです。50代の女性で、私がお会いした時には余命1ヶ月ほどでした。自分の意識がある間に遺影の撮影をしてほしいとのご依頼で、メイクをして差し上げることになりました。歩行も不自由で、化粧をしている間も会話するのさえしんどい様子でした。

その女性が最後に私にこんなメッセージを伝えてくれました。

「たとえ自分が死ぬってわかっていても、自分らしく最後まで生きたい。がんになっても、余命宣告されたとしても、自分らしく生きたいと思っていいんだということを今後いろんな人に伝えてあげてください」

彼女のこの言葉が今も支えの一つになっています。

学校への導入やオンラインサポートも──今後の動き

看護大学での授業の様子

まずは、高知で化粧ケアを導入してもらえる施設や病院を探したいですね。継続的な導入がもちろん理想ですが、まずは単発からでも、化粧ケアの有効性を知ってもらえたらと思っています。

また、医療福祉系の学校の授業に取り入れてもらうようなことも目指しています。実は東京にいた頃から現在まで、看護大学で5年ほど化粧ケアについての講義を担当しています。看護師の方が現場に出る前に、化粧ケアという代替療法の存在を知り、患者さんのニーズを理解してもらうことは非常に意味のあることだと思っています。そのような教育カリキュラムを導入している学校はまだまだ少ないので、そうした動きを高知でも進めていきたいと考えています。

そのほか、現在はがん患者の方向けにオンラインサポートも準備中です。外見のケアを相談できる病院や施設は多くないですし、特に男性だと化粧ケアについて相談するのは勇気がいることだと思います。そういった方々が気軽に相談できるような窓口になれたらと思うんです。


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