地域とつながり、観光の力で高知に人と消費を──40代起業の原動力とは:O-SHIKOKU代表・岡林雅士

高知で観光業を手がける岡林雅士(おかばやし・まさし)さんへインタビューしました。岡林さんは、2018年にKOCHI STARTUP PARKが開催した事業開発プログラム「ステップアッププログラム」でも事業育成を行ってきました。

高知に人を呼び込む3本柱の事業展開

私は2018年11月に「O-SHIKOKU(おしこく)」という観光創造業の会社を立ち上げました。現在は、高知で主に3つの事業を展開しています。

まず1つがインバウンド(外国人が国内へ訪問する旅行のこと)型の旅行業です。インバウンドと言っても、ここでは海外の方に限らず、高知県内外のお客さまを高知へ呼ぶことがメインとなります。

2つめが、コンサルティング、コーディネーター業。前職の旅行会社時代から培ってきた経験や人脈を、高知の観光を盛り上げるために活用しています。

そして3つめが「こうち食べる通信」という情報誌の運営です。

それぞれが独立した事業ではなく、相互に関係性をもたせながら、「高知に人を呼び、お金が落ちる仕組みをつくる」というビジョンに向かっています。

300年続く日曜市をキッチン”に変える

僕がKOCHI STARTUP PARKのプログラムや高知大学主催の「こうち観光カレッジ」に参加しながらアイデアを磨いていったのが「日曜市キッチン」という事業です。現在も、旅行業の商品の一つとして展開しています。

これは簡単に言うと「体験型グルメツアー」です。

ステップアッププログラム参加時に制作した「日曜市キッチン」のフライヤー

高知では、毎週日曜に高知市の追手筋というメインストリートで青空市を開催しています。およそ1.3kmにわたり、400以上の店舗が並ぶ姿は圧巻で、青空市としては日本一の長さを誇ります。高知で300年以上も続く文化の一つです。

高知ってとても食べ物が美味しくて、例えば「じゃらん宿泊旅行調査2018(リクルートじゃらんリサーチセンター調べ)」によると、「そこならではの食・特産品に興味があったから」の理由で選んだ旅行先の1位は高知で2017年に続き2年連続でした。また同調査の「都道府県魅力度ランキング 」でも、「地元ならではのおいしい食べ物が多かった」の項目で2013、14年、16年度に1位、2017年度は2位と、非常に高い評価を受けています。

実は、僕が生まれ育った場所もこの日曜市のすぐ近くで、子どもの頃から日曜市の魅力に触れていました。ちなみに私はこの日曜市のある追手筋沿いにある居酒屋の息子です(笑)。

さまざまな高知の名産が並ぶ日曜市

しかし、県外や海外からの観光客の方の場合、これだけ魅力的な食材を並べる日曜市に来ても、生鮮食材を持って帰ることは難しいですよね。とはいえ、ホテルでも調理はできない。

「それはもったいない!」ということで、日曜市キッチンでは、この日曜市で買った食べ物をその場で調理して、お酒などを飲みながら食します。

また、ツアーには専属のコーディネーターが同行し、参加者のニーズに合ったお店をご案内するなど、トータルで高知の魅力に触れてもらう機会を提供しています。

高知県民は、日本一アルコールを飲む(出典:総務省家計調査)ということもあり、街には居酒屋も多いですが、意外と昼間からお酒を楽しめる場所は少ないんです。それを楽しめるのが日曜市キッチンです。青空の下で、ヨーロッパの市場のような空間を提供できたらと思っています。

ツアーで世界各地を巡った20年間、世界のどこにも負けない高知の魅力に気づかされる

会社を立ち上げる前、私は旅行会社に20年以上勤めていました。当時、ツアーなどで世界中をめぐりましたが、世界を見る中で、改めて、地元高知の豊かさに気付くんです。食事も、自然も、県民性もとても魅力に溢れている。

でも、それを県外へ打ち出したり、観光と結びつけたりという動きはまだ十分には取れていないように感じていました。宿泊施設や農家、地域のレストランやおみやげ屋さん、交通機関……地域の皆さんが頑張っているものの、そこにお金が生まれていない状況を何とか打開できないかというのが、事業を立ち上げるきっかけになったそもそもの僕の思いです。

旅行業も、高知の人を外に連れて行くんじゃなくて、県外、海外のお客さんを高知に連れてきて、高知でお金を使ってもらえる仕組みを作りたいという思いがきっかけでした。

情報誌×食材×ツアーの「こうち食べる通信」

2019年5月に創刊した「こうち食べる通信」

そんな理想を実現するために、先に挙げた3つの事業をやっているわけですが、最近力を入れているのが「こうち食べる通信」という情報誌の運営です。

「食べる通信」というのは「日本食べる通信リーグ」という一般社団法人が統括する“食べもの付き情報誌”です。現在は国内外合わせて41の地域で発行されていて、高知地域の編集部を私たちのチームが運営しています。

僕たちが運営するこうち食べる通信のコンセプトは「動きたくなる情報誌」。食べる通信のそもそものコンセプトは生産者と消費者をつないで「関係人口」を増やそうというものですが、僕はさらに、生産者と消費者をつなぎ、高知に来る(動く)人、「関係交流人口」を増やしたいと思っています。

食べる通信には、高知の食のつくり手が収穫した食材がセットになっている。(写真はイメージです)

2019年5月に創刊したばかりで、会員の募集など、積極的にプロモーションをしているところです。刊行前の段階から、とびきり優秀なスタッフが集まってくれました。編集長も食材の選定も全てその道のプロフェッショナルが担当していますから、クオリティには自信を持っています。

とはいえ、食べる通信単体で大きく収益化を図るのは難しいでしょう。しかし、僕たちは食べる通信を「食と観光のプラットフォーム」と捉えています。食べる通信の読者専用ツアーを企画するなど、別事業とのシナジーを生む展開が可能なので、その点が強みですね。

旅行機能を持たせることができたら、各地の食べる通信では初になると思います。2年で会員数1000人という大きな目標を掲げているので、そこを目指して、日々、全国各地を回って、高知の魅力を訴えています。

「観光はかけ算できるのが魅力」

とにかく一貫して実現したいのは、同じく高知を愛する地域の人たちと繋がり、高知に人を呼び、消費を生み出すための動きを作り出すこと。

そのためにできることを多方面で仕掛けていきたいです。直近では、食べる通信の刊行もスタートしましたし、早く読者限定ツアーを作りたいですね。

ありがたいことに、前職の旅行会社では、四国営業センター長兼高知支店長として勤務していました。そのまま行くと安定の世界だったと思います。それでも、今こうしてチャレンジしているのは、ひとえに「こうち」を愛しているからです。

同時に、このチャレンジが、家族や周囲の方々に支えられていることも実感しています。2019年4月には第2子も誕生しましたし、この子たちのためにも70歳まで働き続けたい。

そして、その過程で出来る限り多くの人たちを巻き込んでいきたいんですよね。もし同じ志を持っている人やコラボできる可能性を感じた人がいれば、ぜひ一緒にやりたいと思っています。

観光ってとても裾野が広いので、いろいろな分野で「かけ算」できるんです。ぜひ一緒に高知を盛り上げていきましょう。


こうち食べる通信の詳細はこちら

https://www.kochi-taberu.com

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