150回のメンタリングを経て──起業家の可能性を信じられるように:高知県産学官民連携・起業推進課 山川はるか

KOCHI STARTUP PARK(以下、KSP)を主催する高知県産学官民連携・起業推進課。同課で2018年4月からKSPの運営を行う山川はるかに、この1年の歩みを聞きました。

会社員から高知県庁へ、県の課題意識に共感してUターン

私は、高知県庁の産学官民連携・起業推進課という部署に所属して、昨年度よりKSPの運営に携わっています。

生まれは高知県の室戸岬という場所です。地図で見ると、右下の尖った先端部分ですね。

高知県産学官民連携・起業推進課の山川はるかさん

大学進学を機に高知を離れ、その後は民間企業で勤務をしていましたが、就職して7年目が終わったタイミングで、高知に帰ることを決めます。それで就職先を探していたところ、ちょうど高知県庁が社会人枠の採用をしていることを知りました。

高知に限った話ではありませんが、多くの地方は、人口減少や、マーケットの縮小を課題に感じています。その中で、高知県が打ち出す施策に興味を惹かれたんです。もちろん、実際に勤務していれば、派手なことばかりではなくて、地道な取り組みがあってこそですが。

1年で、のべ約150回の起業相談に同席

現在は、KSPの運営全般に関わっていますが、中でも起業家の皆様とお会いする機会が多いのは、「オフィスアワー(起業相談)」です。

オフィスアワーの様子

KSPでは毎週月曜に、事業開発の専門家をメンターとして招き、起業家の方々からの相談を受け付けており、そこに私も同席しています。

主には、県が主催する各種プログラムやサポートをご案内したり、事業のトライアルができる県内機関をおつなぎしたり、といったことをしています。

起業家の方々の動きを見ていると、1、2週間、下手すれば数日空くだけでも、事業の状態やご本人の目指すべき方向性が大きく変わることもあります。事業のステージが変われば、悩みもそれに合わせて当然に変わっていく。

そのような変化に耳を傾けながら、その時々に合ったサポートや支援機関を丁寧にご案内することを心掛けています。

アイデアレベルからの伴走に当初は戸惑いも

県庁での勤務は今年で9年目に入ります。

最初に配属されたのは商工労働部の経営支援課という部署で、4年間在籍しました。ここでは、地域の商工会や商工会議所さんなど、事業者の支援機関とのお仕事に関わりました。

次に異動したのは、産業振興推進部の地産地消・外商課が所管している県の外郭団体である高知県地産外商公社です。そこは、東京・有楽町の駅前にあるアンテナショップ「まるごと高知」の運営や県産品の外商を担当する団体でした。この時は、高知県の食材などを持って、都内の飲食店に営業へ回ることが多かったですね。

そうして、2018年4月に現在の部署へ異動となります。

以前の部署では、もうすでにモノがあって、それを今あるマーケットでどう売って行けば良いか、他の競合とどう差別化していけば良いかを考えるところでした。一方で、KSPでお会いする起業家の方々とは、アイデアの段階からご一緒する場合も少なくありません。そこでは、これまでとは全く違うスタンスや考え方が求められることになります。そのギャップに、配属されたばかりの頃は戸惑いも感じていました。

KSPのコミュニティの中で、数多くのプロジェクトが生まれている

起業家の可能性を、本人以上に信じられる存在に

そういった戸惑いもあり、配属当初はオフィスアワーに同席していても、私から積極的に何かコメントをするようなことは控えていました。当然ながら、私にとってゼロイチの事業開発は全く未知の部分でしたし、プロではない自分がそこに口を挟むことに抵抗があったんです。でもこの1年間でその考えも少しずつ変わったように感じます。

オフィスアワーに同席する中で、メンターの方々の接し方を見ていると、彼らの態度に一貫したものを感じられるようになったんです。

それは誰よりも、時には本人以上に、起業家の可能性を信じていること。

正直、そのアイデアでは厳しいんじゃないか……一見してそう思えるものでも、彼らは決して否定せず、その成長のための道筋を考えていきます。みんな一様に、どうやったらそれを実現できるのか、という視点で話をするんです。

横にいた私は「大丈夫なのかな」とドキドキしながらその様子を見ていましたた。でも長いスパンで見た時に、少しずつステップアップしていく起業家の皆さんを見て「あ、メンターの人たちはこういう世界が見えていたんだな」って気づく瞬間があるんですよね。

私も少しずつですが、そういった世界を一緒に見れるようになってきたんじゃないかな、と自身の変化を実感しています。

3月に開催した「第4回KSPデモデイ」での様子

KSPでは半期に1度、「デモデイ」というイベントを開催して、起業家の皆さんがこれまでの事業開発の成果を披露します。

昨年11月に初めてデモデイを見た時は、起業家の皆さん同様に達成感を感じたんですけど、今は彼らが次にどんなステップを踏んだらいいか、それを考えるようになってきていて。だからデモデイが終わった瞬間に「次はいつオフィスアワーに来ます?」って聞いたり(笑)。

こういった感覚の変化からも、私がゼロイチの世界観にちょっとだけ順応できてきた1年間かなと思っています。今では、とにかく自分なりでも、相談に対して、答えられるように、何も成果がなかったということがないようにという意識で同席しています。

「上手じゃなくていい。とにかく返すこと」──高知のハブ人材を目指して

事業開発に終わりはありませんから、当然、一度プログラムに参加してくれた方がまた別の形で相談に来てくれるようなケースも増えています。そういう意味で、この2年で土台が固まってきて、KSP全体としての求められる役割も変わってくると思います。

その時に、これまで通りの型にはまった対応をするのではなく、彼らがきちんと次のステップを踏めるような形でサポートを紡いでいける仕組みを作れればと考えています。

そのためにも、県庁内の各部署との連携など、高知の中でハブ的な役割をより大きく意識したいです。

まだまだ、すべてのご相談に対して的確なアドバイスができているとは自信を持っていうことはできません。でも、起業家の彼らから投げられたボールに対して、うまく返球はできなくても、とにかくレシーブしてボールが落ちないように、そこは意識しています。

今後の開催プログラム

6/16(日)スタートサロン#2「創業初期のPR」

6/23・7/7(日)アイデア検討会「頭の中のアイデアをカタチに」

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