宿という「場」の新しい可能性にチャレンジする:TOMARIGI HOSTEL・篠田善典さん

昨年、高知市の中心部近く、菜園場商店街にオープンした「TOMARIGI HOSTEL」。その魅力的なコンセプトや顔の見える事業運営から、人気のゲストハウスになっています。

今回は、TOMATIGI HOSTELを運営する代表の篠田善典(しのだ・よしのり)さんに、事業を展開する上で大切にしていることを中心に、お話を聞きました。篠田さんは過去に、KOCHI STARTUP PARKの「オフィスアワー(起業相談)」にも参加いただいています。

菜園場商店街でオープンから1年半「TOMARIGI HOSTEL」

私は2018年2月に、高知市にある菜園場(さえんば)商店街で「TOMARIGI HOSTEL」を開業しました。現在は、メインとしてホステルの運営をやりながら、ホステル内で「Bar After5」というバー営業も行っています。

以前から、バー自体はあったのですが、2019年の4月から関わってくれるスタッフが増えたこともあり、ゲストハウスという特性を活かした「人」にフォーカスした形でリニューアルオープンしました。

Bar After5(写真に写るのが篠田さん)

コンセプトは、「re_after5」。5時以降の時間の活性化を狙っています。日替わりで個性豊かなスタッフがバーテンダーとしてカウンターに立っています。

TOMARIGIを支えるスタッフたち

また、とまり木がある「菜園場商店街」を盛り上げるための動きも展開しています。最近では、学生スタッフの1人が先頭になって、商店街に以前あった菜園場劇場を一夜限りで復活させる「菜園場商店街にもう一度映画館を」というイベントを開催しました。いつも商店街の方々が温かく受け入れてくださるので、とても感謝しています。

イベント「菜園場商店街にもう一度映画館を」開催時の様子

満足度を上げるためのサービス設計──TOMARIGIの工夫

ホステルの運営にあたっては、個々の滞在の仕方を大切にするように気をつけています。

ホステルという特性上、他の利用者との交流を求めて来てくれる方も多いですが、一方で、ゆっくり過ごしたいと考えている人もいらっしゃいます。それぞれの人によっても変わりますし、その時の気分やタイミングによっても変わるでしょう。

ですから、チェックインの際にどういう過ごし方をしたいのかをあらかじめ伺い、静かな滞在を希望される方にはホテルに近い対応を、交流を求める方にはこちらからも積極的にお話をする、といった風に、お客さまに合った対応を心がけています。

ホステル内の様子

また、うちでは必ず「ゲストハウスの利用が初めてか」を聞くようにしています。初めてのお客さまにとっては、TOMARIGIでの体験が、今後のゲストハウスそのもののイメージに直結しますからね。ゲストハウスやもちろん素敵な体験を提供できればリピーターになって頂けるかもしれませんし、そうなっていただけたら非常に嬉しいことですよね。

TOMARIGIは価格だけで比較すれば、高知市の中でも決して安い方ではないと思います。それでもあえてうちを選んでいただいているという認識も、常に忘れないように意識しています。

「現場」から「代表」の意識へ

オープンしてまもなく1年半を迎えますが、最近は自身の関わり方も変化してきています。スタッフが増えたこともあり、以前より現場から離れて「代表」としてとまり木を広める動きを進めています。

私の考えでは、場を運営する場合、代表は大きく2つのタイプに分かれると思っています。

一つは、自分がずっと現場にたって運営していくやり方。

もう一つは、現場から少し距離を置き、場を世に広めていくための動きを進めるやり方です。

私は後者のスタイルを選びました。どちらが良い悪いではありません。単純に、TOMARIGIという場所をもっと多くの人に広めたいという想いが強いんです。もちろん、立ち上げから手伝ってくれていたスタッフが中心になって現場の雰囲気を作ってくれてたり、新しいスタッフが入ってくれたりといった環境があってこそです。

もちろん、現場を離れることに多少の不安やリスクも感じます。そこは、信頼して任せる覚悟が必要ですね。

場を飛び出したビジネス展開──宿という「場」の可能性を追求して、常に新しいことを

嬉しいことに、高知でも新しくゲストハウスをはじめたいという方から相談をいただくことも増えています。そんな時に、私は「将来ゲストハウスでどうしたい?」と聞いています。

ゲストハウスに限った話ではないと思いますが、運営しながら、自分もゆっくり生きてみたいというスタンスなら、それもいいし、私の体感としては生活もしていけると思います。

ただし、私のようにゲストハウスを軸に多方面へ活動を広げていきたいと考えている場合には、かなりの計画性を持って大きな労力を割かないといけません。そういった考え方によってスタンスが180度変わります。

通常のビジネスの場合、その活動を広げるためには広がりのあるビジネスモデルで運営する必要があります。一方で、ゲストハウスのような箱物のビジネスでは、場所が決まっているため、広がりの限界が見えてきます。

もちろん、そうした中で広げることは不可能ではないし、やっている方も多くいらっしゃいます。ただし、そのためには先ほども言ったように、綿密な計画と多大な労力を割く必要がある、ということです。そこを履き違えてしまうと苦しんでしまうかもしれません。

TOMARIGIも、今でこそだいぶ落ち着いてきましたが、最近までは、スタートアップ的に動いてきていた部分が大きく、そのスピード感についていけず体を壊してしまう時もありました。

昨年は、内外含めて100回以上イベントを開催したり、Bar After5などの新しい取り組みを仕掛けてきた甲斐もあり、少しずつ売上も伸びてきています。

どこまでいっても「宿」は「宿」の域を出ない部分も大きい。だからこそ、常に新しいことに取り組むことで、他の宿とは違う独自性が生まれ、そうした動きを機にまた広がりが生まれています。

「ひとがひとに魅了され、ひとがひとを創る」

実は、菜園場商店街の中で2号店のような形でお店をはじめたいと考えているんです。

「まちやど」という概念も生まれてきていますし、今のとまり木から2号店への動線の中で、商店街内での人の流れが生まれてくれば、菜園場の町全体がまた面白くなるんじゃないかと思って。シンプルにこの場所がとても面白くて大好きなんです。

ベースにはビジネスとしての仕掛けがありますが、折角なら今の商店街や街全体への波及効果も考えてたいと思っています。昨年からがむしゃらに走ってきたので、今のとまり木のことも大事にしつつ、今年は「広げる」動きを代表として進めたいです。

「ひとがひとに魅了され、ひとがひとを創る」

最近は、常々そんなことを思っています。

人と出会い、自分とは異なる考え方に触れることで生まれる変化に、改めて価値を感じます。これからのホステルは、ハード面ではなくそこにいる人の価値によって選ばれていくと思います。

そうした「人の時代」が加速していく中で、とまり木としても改めて「人」にフォーカスする意識を強く持って、スタッフと共に取り組んでいきたいです。


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