転職と同時に起業、ローカルでの事業成功のカギを高知で探る:アルファドライブ高知代表取締役・宇都宮竜司

今回は、KSPでもメンターとしてオフィスアワー等でも起業家の皆さまに伴走いただいている宇都宮竜司(うつのみや・りゅうじ)さんに話を伺いました。

宇都宮さんは7月に転職、同時に自身の会社も立ち上げるなど新たなキャリアを歩みだしたばかりです。

リクルートに入社、2年間で約400のスタートアップ等を支援

私は愛媛県の出身で、昨年から縁あって、KOCHI STARTUP PARKでもメンター等の役割で関わっています。現在は、個人的に高知県柏島にて、「東京から一番遠い開発合宿スペース」をコンセプトとした事業を立ち上げようと動いているところです。詳しくは後ほどお話しします。

オフィスアワー(起業相談)の様子

私は京都大学の工学研究科を修了後、新卒で「リクルート住まいカンパニー」に入社しました。広告の企画営業を半年ほど担当した後、新卒採用などの人事担当として学生との面談やインターンシップの企画運営をしていました。

それから人事業務を1年ほど経て、「リクルートホールディングス」への出向が決まり、同社が運営する「TECH LAB PAAK(テックラボパーク、現在は閉鎖)」というスペースのコミュニティマネージャーを担当することになりました。

TECH LAB PAAK時代の写真(最前列中央右が宇都宮さん)

TECH LAB PAAKは、スタートアップや学生、研究者らの、テクノロジーを通じて世の中をより良くする可能性を秘めた秘めたイノベーティブな活動を6ヶ月間無償で支援するプログラムです。

1サイクル6ヶ月のプログラムで、3ヶ月に1度のペースで新たな活動を持った人たちがコミュニティへ入ってきます。最終的には、会員以外も含めると400近いスタートアップや研究者、学生のチームのプロジェクトを支援したことになります。

高知のITベンチャー「SHIFT PLUS」へ転職、そして移住

高知県と関わりを持ったのは、その次のキャリアでのことです。

新卒でリクルートに入社した時から、将来的には起業したいと考えていました。そしてTECH LAB PAAKで起業家やスタートアップの熱量に触れる中でも、その思いは増していきました。

非常にやりがいのある仕事でしたが、心のどこかで、自分が起業することと起業家をサポートすることが、近いようで交わらない領域であるとの葛藤を常に抱えていたのも事実です。

そんな時に、高知でITベンチャーの経営をしていた大学時代の友人から、その会社の新規事業開発部門の立ち上げを一緒にやらないかと誘いを受けました。それが前職の「SHIFT PLUS(シフトプラス)」です。

当時、大学卒業を機に地元の愛媛を離れていた私は、年に数回、帰省のたびに地元が小さくなっていくような寂しさを感じていました。何かやりたいとは思いつつも、ビジネスや仕事としてどう関われるのかのアイデアはなく、頭の片隅に置いていたような状況です。

高知という地元と近い環境での新規事業開発の経験は、そうした自分のモヤモヤに対する一つの打開策にもなるんじゃないかと思い、高知県に移住してSHIFT PLUSで働くことを決めました。

課題先進県だからこそ──高知に新たなチャレンジを応援する風土を感じた

実は、誘われた当初は話半分に聞いていたところもあったんです。ただ実際に現地の様子を見ないまま断るのも違うなと思い、どちらかというと断る理由を探しに高知に行くことにしました。それがSHIFT PLUSの2周年記念イベントのタイミングです。そこで、 会社の人や高知県庁の方など地域のみなさんと話をする中で、高知県は新規事業を起こしていく場所としてすごくいい風土を持っているなと感じたんです。

高知の人は、新しいことに対して非常に前向きに応援してくれる気質を持っていて、課題先進県と言われるように課題意識が共有できているからこそセクターごとに切るのではなく、みんなで協力する。そんな雰囲気を感じました。

そうこうしているうちに当初の考えがすっかり変わり、次のチャレンジは高知県でしようと心を決めたんです。

「宇都宮さん、つまらんサラリーマンになってませんか?」──事業立ち上げのきっかけ

SHIFT PLUSの新規事業開発部門では、事業の企画からメンバーの採用まであらゆる業務を担当させてもらい、充実した日々を過ごしていました。しかし入社して3ヶ月ほど経ったある時に、TECH LAB PAAK時代にプログラムに参加してもらっていた、とあるVR関連のスタートアップ経営者の方と久々にお会いする機会がありました。「実は高知県で、今こんなことやっているんですよ」なんて話をしていたんです。

そうしたら、「久しぶりに会ったと思ったら、宇都宮さん、なんだかつまらんサラリーマンになってませんか? 」って。

衝撃が走りました。新たな土地でうまくやろうと思うがあまり、いつの間にか、チャレンジよりもいかに正しく立ち振る舞うか、そんな思考に陥っている自分に気付かされたんです。

「ビジネスとか採算性とかじゃない、面白いことやらないといかんですよ」との言葉もいただき、自分自身が薄々感じていたことを言い当てられたような感覚ででした。

柏島で「東京から一番遠い」開発合宿スペースの立ち上げ、ビジネスプランコンテストへも参加

そうしたきっかけもあり、本業とは別に個人的なプロジェクトとして、冒頭でお話しした柏島での「東京から一番遠い」開発合宿スペースの立ち上げを考えることになります。

柏島は高知の最西端に位置する場所で、400名ほどの住民が暮らしています。現在、柏島に古民家を1軒借りています。

高知県の柏島

東京のスタートアップは日々注目を浴びていて、情報や人のアクセスが多すぎるからこそ、近視眼的になっているチームがたくさんいるように感じていました。そういったチームが、日常から離れて経営や開発に没頭できるスペースを作ることをコンセプトにしています。

僕にズバッと言ってくれたようなスタートアップが柏島に来て、泊まり込みで開発や経営会議できれば、これまでになかった価値が生み出せるんじゃないかなと。現在もオープンに向けて準備しているところです。

本業と並行しながら事業を進めること数ヶ月、転職して半年ほどのタイミングで高知県が主催する「高知家ビジネスプランコンテスト」にも参加を決めました。

これは、本当にありがたい機会でした。コンテスト当日までの期間、高知で活躍するメンターの方々と共に事業創造をご一緒することができて、「こういうプランなら、〇〇さんとこんな話をしてみるといいよ」みたいな話もたくさんいただいて。1人では思いもつかなかったような広がりがありました。

インプットだけなら自分でやればいいかもしれませんが、やはり、人と人とが会うからこそ生まれる価値があると思います。それが高知の起業支援の場では提供されていて、こうした県としての起業支援のあり方にも非常に感銘を受けましたし、私の事業にとっても大きな収穫でした。

新たなキャリアとして2社の代表に

こうしたキャリアを経て、ちょうど先日、約2年勤めたSHIFT PLUSからの転職を決めました。地域密着で新規事業開発を経験できた非常に濃密な2年間を経て、自分も次のステップに進みたくなったんです。

新たな転職先は、リクルート時代の先輩が立ち上げた、新規事業開発支援全般を行う「アルファドライブ」です。

アルファドライブは東京に本社を持つ企業ですが、これまで主に大企業向けに、社内の新規事業開発の支援を行ってきました。今後は新たに地域の中小企業における新規事業創出を通じて地域経済の振興に貢献したいという思いで、私が代表を務める子会社「アルファドライブ高知」を高知県の土佐町に設立することになりました。

高知を含め、ローカル地域はまだまだフロンティアです。そこで経営レベルで意味のあるレベルの新規事業開発を行うためには何が必要なのか、地域やそこに根付く企業の組織や関係性の構造や、成功のカギ、ネックはどこにあるのか、一つひとつを明らかにしていきます。

SHIFT PLUS時代にも県内で新規事業開発を経験しましたが、事前に知っていれば避けられたような失敗も本当に多くて。仲間やお客さまを苦しめてしまった苦い経験もあります。今は、そうした自分の経験も踏まえて、同じように新規事業開発に取り組む方に貢献したいと思っています。

そうした支援側の仕事もしつつ、やはり自分でも新規事業をしたい、経営をしたいという思いがあり、先日、自分の会社「株式会社Left hand」を設立しました。当面は、あまり事業領域を限定せず、面白いなとか役に立てそうだなと思った仕事を幅広くやっていくつもりです。その中でこれだと決めた事業にリソースを集中させるようなイメージです。

どんどん巻き込まれてほしい、気付いたら先に進めているはず

高知に来てもうすぐ2年ですが、起業支援に関わる県のみなさん、起業家や支援機関など、そうしたたくさんの人たちと知り合えたことで僕の2年間がすごく充実したものになりました。

KOCHI STARTUP PARKで起業相談などを担当していますが、そこにできるコミュティや人とつながることが高知の起業支援に巻き込まれていくことの価値、面白さだと思っています。ぜひ、いろいろな場所に顔を出してみてください。気付いたときにはすごく先に進めているんじゃないかと思います。

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