高知の財布、次の一手は“メイドイン高知”の「鹿革名刺入れ」──害獣被害にも貢献

約1年前、「高知の財布」がSNSを中心に話題に──。

そのキャッチーなコンセプトと、低価格ながら高品質な製品の良さから多くのファンを獲得しました。

手がけたのは株式会社ブランド高知を立ち上げた中島匠一(なかじま・しょういち)さんです。中島さんは、昨年度KOCHI STARTUP PARKの各種プログラムに参加して以来、現在に至るまで、さらなる事業成長に向けて継続的に伴走をしています。

そんなブランド高知が今月発表した新製品が「鹿革」を使った名刺入れです。高知の財布のヒットから1年、これまでの歩みと、今回の新製品に込めた思いを聞きました。

新作「鹿革の名刺入れ」を発表、創業以来の目標「メイドイン高知」を実現

高知の刻印が入った名刺入れ

これまでのブランド高知の製品は、全て中国の工場で生産していました。「高知愛を持ち歩く」をコンセプトにした私たちとしても、本来は高知県内で一貫した生産体制を整えられるのが理想でしたが、立ち上げ当初は、コストなどの問題から実現には至りませんでした。

もちろん、何度も中国の工場へ足を運び、出来上がりについても一つひとつ確認をするなど、品質の面は担保できていましたが、それでも「高知に恩返しする」ため、高知県内での生産体制の準備を、この1年着々と進めてきました。

そうした背景があり、今回、満を持して開発したのが「鹿革の名刺入れ(製品名分かり次第、差し替え)」です。鹿皮は高知県産、加工は高知在住の職人によるハンドメイドと、完全なる“メイドイン高知”の製品が誕生しました。

18年被害額は約14億──鹿皮の活用で害獣被害の解決に

高知県は全国でも獣害被害が特に多い地域です。高知県の野生鳥獣による年間被害額は年々減っているものの、2018年は13億9000万円であり、現在、県が掲げる鹿の年間捕獲目標は3万頭にも及びます。

狩猟された鹿は所定の役所に持ち込むことで、一定額の報酬を受け取ることができます。その際、鹿を丸々持ち込むのは負担が大きいということで、鹿の耳だけを切り落として持っていくことが認められているのです。しかしこれにより、切り落とされた耳以外の部位を焼却処分場に捨てたり、かつては川にそのまま捨てたりといったケースもあったと聞きます。

ジビエの盛り上がりから、最近では鹿肉を有効活用する例なども増えていますが、一方で皮の活用事例はまだまだ多くはありません。

こうした高知の課題を踏まえて、大量に廃棄されている鹿皮を有効活用したいとの思いから、今回の名刺入れが生まれました。

香美市「地域おこし協力隊」とも連携、メイドイン高知を実現する生産体制

現在は香美市の「地域おこし協力隊」協力のもと、市内全域の猟師さんが狩猟した鹿の皮を集めてもらっています。

香美市地域おこし協力隊、猟友会の皆さんと巻狩りを体験した後の写真

そうして集まった鹿皮を製品にするために、まずは下処理を行います。今回の名刺入れ製作にあたって、僕が東京のなめし工場で教わった下処理のやり方を地域おこし協力隊のみなさんにお伝えして、処理をお願いしています。

下処理が終わった「原皮(げんぴ)」は、1ヶ月に1度、まとめて東京のなめし工場へ送ります。なめしが完了したらその皮を再び高知へ送り返し、桂浜にいる職人のもとで、最終的な製品の形まで加工してもらいます。

東京の工場で皮のなめし方を学ぶ中島さん

この職人さんとは、以前僕が参加したワークショップで出会いました。「無駄に捨てられる鹿皮を有効活用したい」という思いに賛同いただき、今回快く引き受けてくれることになりました。

職人さんの技術レベルは非常に高く、1個ずつ手縫いのため、ミシン縫いにはない独特の柔らかさが出ています。

すべてが1点もの、狩猟時の「銃痕」もデザインに利用

名刺入れの中には、赤い穴が空いたものも。これは……。

名刺入れを見ると、一部の商品には「赤い印」がついています。これは、狩猟の際の銃痕です。

猟師さんたちは「巻狩(まきがり)」という方法で猟を行います。これは、山を囲って鹿を上へと追いやり、最後に銃で仕留める手法です。名刺入れの銃痕はこの時についたものです。

通常、銃痕がついた部分は捨てらるのが一般的ですが、そこをあえて活用するのも面白いと考え、使用しました。穴の内側部分に赤く染めた鹿皮を裏張りしているため、写真のような仕上げりになっています。ちょっとしたこだわりですが、実際に生きていた鹿の皮であることを実感してもらえたらと意図して作りました。

だいたい全体の4分の1ほどの商品に、こうした銃痕が付いています。銃痕にもさまざまな形がありますし、枝や岩にぶつかってできたと思われる傷跡など野生動物特有の傷みも残っています。全ての名刺入れが唯一無二の味わいを持つ製品です。

「高知に恩返ししたい」

鹿皮の入手や、メイドイン高知を実現するための生産体制の構築など、今回の製品発売にあたっては、これまで以上に難しい課題がありました。しかし、多くの人の協力のもと、発売できることになりました。

僕たちブランド高知の目的は「高知愛を広げる」ことです。ブランドの立ち上げからこれまで、多くの方々に商品を手に取っていただくことができました。

この名刺入れは、僕自身が高知に恩返しをしたいという思いで作った商品です。同じように、高知に恩返しをしたい、高知愛を表現したいと思っている人たちに手に取ってもらえたら嬉しいです。そしてまた、この名刺入れを使うことが、自然環境や地産地消に少しでも意識を向けるきっかけになればと思います。

[期間限定]10/16(水)〜10/31(木)まで「高知 蔦屋書店」で発売中

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