夫婦で事業を立ち上げる2人、起業家は家族にどう向き合うべきか

2月16日に開催するスタートサロンのテーマは「起業家と家族関係」。

中小企業庁委託の調査によると、「起業準備者が具体的な起業準備に踏み切った理由」の第1位は全年代で「家族の理解・協力が得られた」ことでした。

https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H29/h29/shoukibodeta/html/b2_1_2_3.htmlより引用

16日のサロンでゲストとして登壇するカンターキャラバンジャパン代表の並木渉さんは、妻の美緒さんとともに事業を立ち上げています。そんなユニークな並木さんご夫妻に、お話を聞きました。

典型的なサラリーマンだった時代、起業のきっかけ

カンターキャラバンジャパン代表の並木渉さん(左)と妻で副代表の美緒さん(右)

──渉さん、美緒さんよろしくお願いします。まずは、お2人が立ち上げている事業について簡単に教えてください。

並木渉さん(以下、渉) 私たち「カンターキャラバンジャパン」では、自然の中で開催する企業のオフサイトミーティングや合宿の場を提供、プロデュースすることで、働くに余白を生み出したいと考えています。

──事業を立ち上げるきっかけは何だったのでしょうか?

私も妻も、元々はメーカーに勤める同僚で、いわゆる典型的なサラリーマンでした。

事業の原体験になったのは、流産と不育症です。それによって、妻が体調不良により会社を辞めることになり、精神的に落ち込んでしまったり、それにつられて自分の気持ちも沈んでいったり、という状況でした。

そんなきっかけもあり、家族のパートナーシップをより強固にしていく必要性を感じました。そこで、そうしたパートナーシップに関する課題を解決する事業の立ち上げを検討していることを妻に話したところ、「私も興味がある」ということで、一緒に始めることになったのです。

通常、起業家は個人の原体験に基づいて事業を立ち上げることが多い中で、私たちのように夫婦共通の原体験をベースにした事業は珍しいかもしれませんね。

パートナーを「巻き込む」のも相手に理解してもらう一つの方法

──夫婦で原体験を共有できたことが、2人で立ち上げる理由になったんですね。そんなお2人は、今回のサロンのテーマになっている「家族の理解、協力を得ること」に対してどんな考えを持っていますか?

 もちろん、熱意をもって説明して納得してもらうのは大切ですが、「はじめてしまう」のも一つの手かなとは思います。はじめてみると応援してくれる人も出てきますから。

もっと言えば、私たちのケースのように、自分がやりたいことにほんの一部でもいいから巻き込んでしまうのも良いのではないかと思います。

例えば奥さんが何か始めようと考えた時、旦那さんが営業職であれば、営業のノウハウやお手伝いをお願いすることで、パートナーにとってもそのチャレンジが「自分ゴト化」します。

自分も関わるようになると、結構みんなそこからグイグイ入り込んでいくケースは多いですよ。頼られると、案外嬉しいものなんですよね。

ですから、たとえ自分たちのように共通の原体験でなくても、「巻き込んでしまう」「つないでしまう」ことで共通のものチャレンジになる可能性はあると思います。

「夫が月曜日に死んだ顔して会社行くことが何よりもストレスだった」

──一緒に立ち上げるにあたり、美緒さんとしては不安はなかったですか?

並木美緒さん(以下、美緒) 何か新しいチャレンジを踏みとどまる理由には、一般的にお金の問題などが大きいかと思います。それはもちろん重要な要素だとは思いますが、私の場合はそれよりも大きな問題が1つありました。

私にとっては「夫が月曜日に死んだ顔して会社へ行くこと」が何よりもストレスだったんです。日曜の夜からテンションが下がって、夫が「明日は行きたくない」と言っている姿を見ていました。私が働いていた時は私自身も同じで、「行きたくない、けど行かなきゃ」って無理矢理にでも自分を言い聞かせていたんですけど、自分が仕事を離れて客観的にその姿を見ていると、「これっておかしいな」と思うようになりました。そんな嫌なことをしてまで稼ぐ必要あるのかな? って。

それなら少し所得が下がっても、嫌じゃないと思える働き方や仕事を選ぶ方が良いと思うし、自分の一番身近な人にそうあってほしいなと思ったんです。

パートナーをチャレンジしない言い訳にしてないか

──よく、パートナーの理解が得られないことをいわゆる「嫁ブロック」などと表現することがありますが、美緒さんとしてはそれをどう見ていますか?

美緒 わからなくはないです。私たちの場合、家のローンもなかったし、子どももいなかったので、リスクがあまり高くなかったことは幸いでした。周りの友人、知人から「5000万のローンがあって……」といった話を聞くと、一概にそういう考え方を責めることはできません。

ただやっぱり思うのは、その5000万の家を守るために、パートナーが毎日死んだ顔をして会社に行くことがどうなのか、です。私の場合はそれが何よりも譲れないポイントでした。

 私の経験からすると、「パートナーに理解してもらえないこと」を言い訳にしていないか?というのは常に問いたいです。一番言い訳に使いやすい存在なんですよ。「いや、うちの嫁がさ……」って。

でもむしろ、パートナーが理解してくれなくても自分でやっていこうというくらいの気概があるかどうか、本気なのかどうかをそこで見つめ直す必要があると思います。

家庭にビジネスのロジックを持ち込まない

──立ち上げ後、2人で取り組んでいく中で、生活と仕事のバランスや、お子さんが生まれた後の育児とのバランスなど、意識している点などありますか?

美緒 金銭的な話で言えば、まずはお財布の数を増やしました。つまり、フリーランスとして取引先の数を増やしたんです。

会社員の頃のように1つの会社の仕事だけで十分なお金を稼ぐことはできないし、リスクがあるので、はじめは3、4社と。それから事業のフェーズに合わせて、その数を増やしたり減らしたりしながら進めていきました。

 一方で関係性の面で言うと、「家庭にビジネスのロジックを持ち込まない」ことは今でも大切にしています。

もともと私たちがパートナーシップに関する事業を始めようと考えたときに、「我が家の事業計画書」みたいなサービスを考えていました。家族としての事業計画を立てて、それぞれの役割分担などを決めて取り組んでいこうとする試みでした。それでまずは、トライアルとして自分たちでやってみたんです。

すると1週間もたたずにその計画が崩れるんですよ(笑)。家族で一緒にいたらイレギュラーばかりだし、計画を決めてしまうと、相手がそれを実行できなかった時に追及したくなっちゃうんですよね。そうした経験から、家庭の中にビジネスのロジックを持ち込まないことの重要性を痛感しました。

逆に、計画性はないけど「フレキシブルさ」をとにかく持たせています。家族のあり方は日々変わっていて、もちろん子どもが生まれたら大きく変わります。だからこそ、フレキシブルさを保つことで、家族の関係性をよりよく維持できるのではないかと思います。

夫婦関係にビジネスのロジックを持ち込んでしまうと、マウンティングの取り合いみたいになってしまうんですよ。

美緒 そうそう。どっちが上だとか、相手の全部を征服してしまおうとしがちですよね。でもやっぱり家族とはいえ違う人間ですから、全部を理解するのは難しいですから。

──育児とのバランスはどうですか?

美緒 そこはまだまだ試行錯誤を重ねているところです。正直、今はまだバランスを取りきれていないところがあって、お互いにフラストレーションを感じている部分もあります。たとえば、お客さんとの打ち合わせが入った時に、子どものことを見なくちゃいけないとなると、私が家に居ざるを得ないこともあって。やっぱり私も現場に行きたいなと思うことはあります。仕方がないことではあるんですけど、そこらへんのうまい分担の仕方は模索中ですね。

 そうですね。だからケンカもよくします。それはどこの家庭にもあるような。ただ、あまり感情的なぶつかり合いにはならずに、議論するような感じかもしれないです。

メンバーが入って、より「チーム」になった

──続いて、家族の関係性から一歩進んで、「家族+第三者」における関係性に目を向けると、メンバーやお客さんが入ってくることで、何か変わることや意識していることはありますか?

 最近、実際にメンバーが1人ジョインしてくれましたが、私としては妻への呼び方が違うくらいであまり意識しているポイントはありません。

ただ強いて言えば、妻に対してもメンバーの1人として接するようにしています。あまり家庭感を出さずに、メンバーから夫婦の戯言に付き合わされていると思われないようには気をつけています。

美緒 私は逆に、新しいメンバーが入ってくれたことで関係性は良い方向に大きく変わったと感じています。やっぱり、家族と仕事の仲間って距離感が全く違うじゃないですか。それがうまくいけばいいんですけど、悪い面で働くこともありました。私の物言いがきつくなってしまったり、議論がヒートアップし過ぎてしまったり。そこに別のメンバーが入ることで、「チーム」なんだという意識が強くなってきました。

家族の中という閉じられた環境で細々とやっていたプロジェクトが、今では事業として、チームとして進められているので、今の方がより楽しいです。


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