〜高知宿毛コンシェルジュ 谷口麻耶さん〜

地元だからこそ知る宿毛市の魅力を伝えたい


今回は、宿毛市で「高知宿毛コンシェルジュ」として観光メニューを開発し、地域外から訪れた人と地域を繋ぐ谷口麻耶さんにインタビューしました。
KSPのセミナーを受講しての気づきや今後の展望をお伺いしました。



「何もない」と思っていた故郷が、知れば知るほど魅力的になっていく



宿毛市で生まれ育ち、高校卒業後には高知市内に移り、10年ほど高知市や県外で暮らしていました。
エステや量販店などの仕事を経て、20代後半で旅行代理店に転職しました。
そこで、添乗員や営業として全国の観光地を飛び回るなかで、北海道の五稜郭を訪れた時のある出来事が私にとって大きな転機となりました。
その出来事は、五稜郭の説明に北海道初代長官が宿毛市出身の「岩村通俊」という人物だと書いてあることを発見した時のことです。私の故郷である宿毛市から北海道に渡り、こうして歴史に名を残している人がいるということを、私はそれまでまったく知らなかったのです。
なぜ私は今まで知らなかったのだろう。
これまで「宿毛には何もない」と思い込んでいたのですが、もしかしたら私が知らないだけなのかもしれないと気づいた瞬間です。

宿毛市へ帰ってからは、歴史、偉人、そして今の町のことについて調べ尽くしました。
宿毛歴史館や図書館で郷土資料を読み漁り、素晴らしい功績を残した偉人や愛すべき逸話などたくさんの歴史を知ることができました。
すると、何もないと思っていた町がとても魅力的に見えてきたのです。
宿毛ってこんなにおもしろいんだ!と私自身が感じたことがきっかけとなり、宿毛市を訪れた人にもこの魅力を伝えたいと考えるようになりました。



揺るぎない宿毛愛を、商品として磨き上げる



まずは、「宿毛観光市民ガイドの会」の研修を受けて、観光ガイドを始めました。
ですが、出産・子育ての時期とも重なり、ボランティアに近い形でガイドを続けていくことに難しさを感じていました。
「自分のやりたいこと」は明確になっているけれども、それを事業として成立させることの難しさも分かっていただけに、地元の量販店でアルバイトをしながら悶々と悩む時期を過ごしていました。
起業のきっかけとなったのは、観光市民ガイドや異業種の会などで知り合った地元事業者からの後押しです。私のことを応援してくれる人がいることで勇気をもらい、思い切って起業に踏み切りました。

起業当初から「地域のことを知ってもらいたい」という想いは一貫して持っています。
一方で、どうすればこの想いが伝わるのか、そのための商品をどのように開発していけば良いかが次なる課題となって私の前に現れました。

そこで、KSPの起業ベーシックコースをはじめ、高知大学が主催する「こうち観光カレッジ」、高知県が主催する「土佐の観光創生塾」などを受講し、自分の想いや考えを改めて見直しました。
受講前には「自分が魅力と思ったものを伝えたい」という想いが強く出ていたのですが、講座を通して「ターゲットが求めているものは何か」という、すべてのサービスに通じる基本の考え方を身につけることができました。
ペルソナを設定し、その人物の趣味・嗜好にあったサービス・商品は何かと考えた結果、40〜60代の出張で宿毛市を訪れたサラリーマン向けの商品が完成しました。
夜の宿毛を案内する観光メニューなのですが、「マグロ料理専門店なのにお好み焼きが美味しいお店」、「宿毛らしい、フランクな接客がおもしろい飲み屋さん」などを数時間かけて巡るコースです。
これは、インターネットには掲載されていない、地元民のみが知る宿毛の楽しみ方です。
セミナーの受講を通して気づいたことを、このような観光商品の開発に繋げています。




写真:分かりやすく、親しみやすい説明が魅力



宿毛をますます魅力的な町にするための芽を育てる


写真:ガイドをする際には、手描きのイラストや説明が詰まったスケッチブックが必須

これから事業を軌道に乗せるためには、私自身を知ってもらうことも大切だと考えています。
地域の方々に自分という存在を知ってもらうために、地元の方に向けたイベントの実施などもしています。
単発のイベントを企画するだけでなく、宿毛の歴史や偉人を伝えるコンテンツとして講談の台本作成にチャレンジし、プロの講談師を招いて私が作った講談を披露してもらうといった活動もしています。
そのほか、宿毛市出身の偉人をモデルとした猫のキャラクターを作成していて、地元の人はもちろん、宿毛市を観光で訪れた方にも手にとっていただけるお土産品の開発も現在進行中です。
ですが、事業を広げすぎている感覚が少しあるので、これからは一つ一つの事業を見つめ直し、絞っていくということも必要かなと感じています。

加えて、今後は宿毛で起業のサポートをしていきたいと考えています。
対象は、ハンドメイドやお菓子作りといった仕事を生業にしていきたいと思っている人を想定しています。
ネットで自分のお店をオープンさせるだけでなく、その先、売上を立てていくにはどうしたらよいかといったところまでサポートする事業です。
この事業に取り組む背景には、宿毛で夢を叶える人を一人でも増やしていきたいという私の願いがあります。
多様な仕事、働き方を実現していくことで宿毛市が元気になっていってほしい、その一助になりたいという気持ちです。観光ガイドと同様、根底にあるのは地元・宿毛への想いです。
今後は、観光・起業支援という二つの事業を両輪で回しながら、事業として成長させていければと考えています。




高知宿毛コンシェルジュ 谷口麻耶
【ホームページ】https://sukumo.hp.peraichi.com/kanko/
【連絡先】090-5278-5848(お電話でも予約受付いたします。)



文責/長野 春子