~吉田健一さん~

「パフォーマンスで生きていく」大きな決意と新しい挑戦

四万十町松葉川地域初めての地域おこし協力隊として四万十町へ移住し、任期終了後も定住し、大道芸パフォーマンスを武器に起業した「松葉川健一」こと吉田健一さんにインタビューしました。


ジャグリングがあったから、今がある


写真:アドバイザーとして関わる製材所にて


大学進学を機に、富山県から高知に来て6年間を過ごしました。
ジャグリングを始めたのはこの頃で、農学部で学びながら奇術部に所属していました。
その後、愛媛県の製紙会社に就職したことをきっかけに高知を離れましたが、社会人になっても週末などを利用してジャグリングは続けていました。
実はこの頃、一生を会社員として生きることがどうにも性に合わないと思いながらも、この環境で生きていくしかないという大きな葛藤を抱えていました。
そんな時に出会ったのが香川県で活動する「瀬戸内サーカスファクトリー」でした。
そこで、ジャグリングを通して自分らしい表現ができ、アートやものづくり、音楽への造詣が深くなっていく経験によって、自分という存在が救われたような気持ちになりました。

またある時には、招聘したフランス人アーティストから、「ヨーロッパなどではサーカスのアーティストは地域と都会をつなぐ存在だ」ということを教えてもらいました。
フランスでは普段は田舎で暮らすアーティストが多く、パフォーマンスのために都会へ足を運ぶという暮らしをしているそうなのです。
都会と地域を行き来しながら生活するアーティストが地域に一人いることによって、地域の暮らしが豊かになる。この話を聞いて、私も実践してみたいと思うようになりました。

仕事とサーカスの活動を両立する生活を続けて5年ほど経った2018年。「パフォーマンスで生きていく」と決意し、製紙会社を退職して、四万十町への移住を決意しました。



地域おこし協力隊を経て、四万十町松葉川へ定住。そして起業へ


写真:松葉川健一として、町内外のステージに立つ

四万十町は大学時代から付き合っていた彼女が暮らす町でした。
結婚を考えていたこともあり、四万十町の地域おこし協力隊の募集を見てみたところ、松葉川地域の募集を見つけ応募しました。

松葉川地域初めての協力隊として着任した1年目は、地域を理解し、馴染むことを最優先に活動しました。
協力隊として活動しながら、すでにあるイベントの手伝いをしたり、学校関連の手伝いをしたりと過ごしていました。
2年目からはアートプロジェクトを企画し、アーティストを招致して地域で創作活動を行ない、作品を展示しました。
こうした企画を行いながら、地域でどうやって生きていくのかを真剣に考えていました。
「パフォーマンスで生きていく」ということを軸に、どんなビジネスを展開するか模索する日々が続きました。

3年目には、四万十町が主催するビジネスプランコンテストに参加し、松葉川地域での経験をもとに企画した「都市型市民農園アートガルテン」というアイデアが第3回の大賞を受賞することができました。
この受賞がきっかけで、四万十町の製材業者と共同で開発した移動式サウナ「四万十OUCHIサウナ」が生まれるなど、段々と活動が広がっていきました。

地域おこし協力隊の任期終了後は、協力隊の時から継続している活動のほか、アーティスト招致の際に必要性を感じた民泊の事業をスタートさせるなど、さらに活動を広げています。
複数の活動を並行して進める中で大切にしているのは、無理をしないということです。
私にとって健康を害することは、パフォーマンスへの悪影響と同義です。
そのため、進みは遅くとも、健康や家庭を最優先に取り組むことが何よりも大切なのです。



子どもたちが表現できる場所を作る



現在、2023年3月の事業開始に向けて準備しているのが、子ども向けのジャグリング教室です。
KSPのサポートを受けて事業計画をブラッシュアップし、現在は生徒募集に向けて動いています。

教室はオンラインを基本として、年一回の発表会を開催することを予定しています。
この教室からジャグラーやマジシャンを輩出することが目的ではなく、子どもたちに表現する楽しさや面白さを感じられる場所を提供したいという思いです。

年一回の発表会を設けているのも重要で、舞台を完成させる音楽、衣装、舞台美術の全てを子どもたちに選んでもらうことを想定しています。
ジャグリングやマジックの技術を学ぶだけではなく、自分が選び取ったもので一つの作品を創っていくという経験をすることで、子どもたちが成長し、きっと面白いものが生まれると信じています。
教室で大切にしたい考えは、「選択を否定しない」ということです。
型にはめてしまう方が管理はしやすいですが、子どもたちのさまざまな選択を肯定し、「選ぶ」という行為を尊重したいと考えています。

私は、「パフォーマンスで生きていく」ということが自分の大きな幹だと考えています。
私の存在やパフォーマンス、また教室での経験が、誰かの人生に影響を与えたり、時には役に立てたりすることができれば嬉しいなと思います。


 

吉田健一/松葉川健一
https://tce-kochi.com/matsubakawa/
大道芸教室に関するお問い合わせは下記まで
info@shimnto-house.com



文責/長野 春子