~高知カンパーニュブルワリー 瀬戸口信弥さん~

高知のおいしいを詰め込んだクラフトビール「TOSACO」の次なる挑戦

 

高知に初めてのクラフトビール「TOSACO」が生まれたのが、2018年。そこから5年が経過した2023年。
「TOSACO」を製造する「合同会社高知カンパーニュブルワリー」は、物部川に面する新社屋へ移転しました。
さらなる挑戦を進める「TOSACO」代表の瀬戸口さんにインタビューしました。

 

思い描いた未来図をカタチにする

 

高知カンパーニュブルワリーが高知でクラフトビール「TOSACO」を作り始めたのは2018年のことです。
移住や起業の準備を始めたのは、2年ほど遡った2016年頃からです。

 

当時暮らしていた大阪を拠点に、高知に足を運び移住の情報を収集する傍ら、東京で開催されていた県主催の「高知起業塾」に参加し、起業の芽を育てていました。当時からクラフトビールに関心があり、それを軸に起業プランを練っていましたが、まだ友人に話すのは少し気恥ずかしさを感じるレベルのふんわりとした計画だったと思います。

 

2016年には「高知家ビジネスプランコンテスト」に参加し、そこで優秀賞をいただくことができました。ビジコンに参加したことで、メンターの方々に相談しながら起業プランの磨き上げを行うことができ、頭も心も整理されていったように感じます。
そして、計画が現実のものとしていよいよ動き始めました。

 

大阪と高知を行ったり来たりしながら、起業準備を行い、移住を果たしたのが2018年。
移住先の地元スーパー「バリュー」さんから借りた工場で、クラフトビール「TOSACO」の製造が始まりました。

 

工場の壁には、妻と考えた私たちが目指す醸造所のスケッチを貼っていました。醸造所の隣を川が流れ、棚田があり、家族の暮らしとつながった牧歌的な景色です。小さな規模からスタートし、ファミリービジネス的に営んでいければいいなというのが当初の計画でした。

 

生産が追いつかない!ピンチの場面で助けてくれる地元の人たち

 

そんな計画をしていたのですが、現実はまったく異なるものでした。

 

高知初のクラフトビールということで「TOSACO」をたくさんのメディアに取り上げてもらい、反響がすごかったのです。
スタートからこんなにたくさんの人から応援してもらえることになるのは予想外でした。

 

嬉しい反面、小さく始めるつもりでいたので、ビールの製造をできるのは私1人しかいませんでした。予想を上回る注文に応えるため、無我夢中でビールを作り続けました。

 

そんなある日、ふらふらの私を心配してか、町内会長さんが「なんか困っちゅうことはないか?」と声をかけてくれました。そこから数人で瓶のラベル貼りなどの作業を手伝ってくれたことで、体力面ではもちろん、次なる一手を考える余裕を持つことができたことは私にとって大きな助けとなりました。

 

たくさんの人の助けがあって、当初の計画から3年ほど前倒して目標を達成していくことができました。私と香美市をつないでくれた移住支援を行う「いなかみ」の方々、場所を貸してくれた「バリュー」さん、そして手を貸してくれた方々。
助けてもらってばかりで、まだまだお返しできていないなと感じています。

 


写真提供:高知カンパーニュブルワリー

 

「TOSACO」第2章へ。新工場での新しいチャレンジとは

 

旧工場での生産量が上限に達したことで、もう少し大きな設備が必要になり、移転を検討するようになりました。
そして、2022年12月に香美市香北町に工場を新設し、翌年1月から本格稼働させました。

 

大きく変わった点としては、設備を一新し、量産できる体制になったことと、タップルームを併設したことです。変わらないこととしては、お客さまからのOEMのご要望に対して小ロットで応えていることと、一本一本丁寧に仕上げているという点です。

 

工場新設にあたっては、かなり意欲的な事業計画を立てているので、製造・販売の両面で一層努力していかなければと思っています。

 

また、タップルームについてはお客様には工場併設ならではの臨場感を味わっていただきたいということと、私たちとしては念願だったお客さまとの接点を持つことのできる場所となります。
お客様の声をダイレクトにお伺いし、今後の商品づくりに活かしていきたいと考えています。

 

 
写真:真新しい新工場で「TOSACO」は作られている。

 


新社屋外観。向かって右側が4月オープン予定のタップルーム。

 


写真:工場併設のタップルームには、真新しいタップが並ぶ。

 

プレーヤーから経営者へ

 

「高知カンパーニュブルワリー」は、「マイプロジェクト」であり私の中にある価値観を体現したビジネスです。高知のおいしいものを詰め込んだビールがあり、ビールを囲んで家族の笑顔がある。和をもたらすビールという存在が、世の中で一番好きなのです。その気持ちが原動力となり、苦しい局面でも乗り越えていけるのだと思っています。

 

「ビールを造りたい」という気持ちで創業し、そこから5年。その気持ちはまったく変わっていないのですが、これからのことを考えると「経営」というフェーズに移るときかなというのも感じています。

 

会社として利益を上げることはもちろん重要です。私がそれと同等に重視しているのが、社会との結びつきです。
例えば、地域で廃棄されている規格外の果樹や野菜の有効活用や、地域で新しい雇用や産業を生み出すことなど。
地域のためになることは何か、私たちにできることはどんなことなのか。
そう考えながら行動していくことが、私の中でのモチベーションにつながっています。

 

これからも、「TOSACO」を待ってくれているお客様に応えられるよう、高品質のビールを造り続けるとともに、これまで関わってくれた方や地域に感謝をお返ししていければと思います。

 

 

高知カンパーニュブルワリー

住所:高知県香美市土佐山田町栄町2-29
(新社屋:高知県香美市香北町橋川野584-1)

https://tosaco-brewing.com

 

文責/長野春子