〜株式会社1031 Game Studio 佐野義明さん〜

ゲームクリエイターが立ち上げた高知発ゲーム制作会社


高知にUターンし、ゲーム制作会社「1031 Game Studio(イチゼロサンイチゲームスタジオ)」を立ち上げた佐野義明さんにお話を伺いました。夢を持つ若者を応援したいという熱い想いと、佐野さん自身が描く大きな夢。高知の未来にワクワクを創造する会社が誕生しました。

 




友達とお金を出し合って買った、一台のパソコン。そこから、ゲーム作りに関わる人生が始まる。
 

- ゲーム業界に興味を持ったきっかけを教えてください。

私が中学生・高校生くらいの時は、ゲーム業界はまさに黎明期。ゲームを「作る」ことに関心のあった私は、中学生の時に友人とお金を出し合って一台のパソコンを購入し、ゲーム作りを始めました。当時は、雑誌にゲームのプログラムが掲載されていたので、最初はそのプログラムを参考にしてゲーム作りを始めました。高校生になると、将来の仕事について真剣に考え始めます。当時、目新しかったゲーム業界がたまにテレビで取り上げられ、ゲームができるまでやその働き方が紹介されていました。それを目にし、「この業界で仕事をしたい!」「この仕事ならば情熱を持って成し遂げられる」とゲーム業界で働きたいという意志が固まりました。

そうして、高校卒業後は生まれ育った土佐清水市を後にして、東京へ単身引っ越します。しかし、その時点では仕事が決まっていない状況。アルバイトをしながら、がむしゃらに絵を描いて、その絵をゲーム会社に送ってという生活を送っていました。やっと、とあるゲーム会社に雇ってもらえることになり、上京数ヶ月にして念願だったゲーム業界への就職が叶いました。

そこから、仕事をしながら3Dの技術を学ぶために専門学校に通うなど、技術向上への努力を惜しまず働きました。何度か同じ業界で転職した後、23歳くらいの時にフリーランスのデザイナーとして独立。大手ゲーム制作会社が手がけるいくつものコンシューマーゲームに参加しました。


 

ふるさと高知を、子どもたちの夢が叶う場所にしたい
 

- ゲーム業界で実績を積んできた佐野さんが、なぜ高知へのUターンを検討されたのでしょう?

高知へのUターンを考え始めたのは2019年くらいからで、45歳の時です。なんとなく高知県の置かれている現状をYouTubeで調べてみると、「高齢化」や「人口減少」などの文字が並び、どこか寂しい気持ちになりました。それをきっかけに、何かできることはないだろうかと考え始めました。

自分が身を置くゲーム業界について考えてみると、「ゲームクリエイター」を将来の夢に挙げる子どもは多いですが、地方でゲーム作りを学べる場は少なく、夢を諦めてしまう子どもが多いという現状に気づきました。それならば、地方で子どもたちがゲーム作りを学べる場を自分で作ってしまおう!と思い、「こうちスタートアップパーク(以下、KSP)」の東京窓口に相談しました。







東京にいながら、高知での起業を相談
 

- KSPの東京窓口ではどのようなことを相談されましたか?

現在の自分の状況や高知でやりたいことなどを相談しました。それまでフリーランスとして20年以上仕事をしてきましたし、コロナ禍で進んだテレワークやゲーム制作会社の地方移転などといった業界内の流れもあり、高知へUターンしても変わらずやっていけるという自信はありました。

主な内容としては、高知でゲームを作る環境を整えたいということと、新規事業として取り組みたいと考えていた、子どもたち向けのプロジェクターを使ったゲーム制作の相談などです。たくさんの事例や専門家などを紹介してもらい、高知にUターンする前からサポートしていただきました。

また、KSPは経営の知識を教えてくれる場所でもありました。事業計画書の作成方法を学んだことは、後の金融機関との融資交渉にも役立ちましたね。
 

 

「夢を持つ若者を応援したい」その想いで法人を設立

 

- そして2022年、高知に帰ってこられたのですね。

高知に帰ってきたのは48歳の時です。当初は、移住前と変わらずフリーランスという働き方でゲームの仕事を続けられたらと考えていましたが、高知で実現したいことを深く考えていくと法人化しかないと感じるようになりました。

私が高知で目指しているのは、ゲーム業界で働きたいという若者が、夢を諦めることなく実現するための後押しです。そのためには夢を持った若者を雇用し、育成する企業が必要不可欠です。フリーランスのままではこうした若者を雇用することが難しいため、迷うことなく法人化することを決めました。
そして2023年8月1日、株式会社1031 Game Studioを設立しました。

 

高知からゲームブランドを立ち上げ!仲間とともに、一からゲームを作りたい


- 起業後は想定通りに進んでいるでしょうか?

フリーランスからスライドする形で起業をしましたので、長くお付き合いのある取引先からは法人後も変わりなく業務委託などの依頼をいただいています。そのため、これまでのところ収支は想定していた通りに進められています。
現在はまだ私1人の会社ですが、これからゲーム業界を志す学生さんや若者を社員として迎えて、会社として成長していくことが目標です。

具体的には、今後3年間は新規雇用と育成に注力すること(来年4月から新卒新入社員3名が入社予定)、3〜5年目は社員とともに一つのゲームタイトルを作ること、そして5年目以降は自社ブランドを立ち上げ、高知から新しいゲームを作っていくことを目標にしています。その時には、社員数40名ほどの企業に成長していたいという計画です。

この計画を実現するにはたくさんの方の協力が必要ですが、繋がりを大切にして、目標に向かって進んでいきたいと思います。

 






 

株式会社1031 Game Studio

文責/長野春子