〜ジャーキー屋Mummy 上杉桜さん〜

ペットが喜ぶ顔を見たい!自ら釣り上げた魚で作る無添加おやつ

今回取材させていただいた上杉さんは、釣りが好きで、飼い犬のライ君のことが大好き。そんな上杉さんが取り組んでいるのが、魚と鶏肉、猪などを使った手作りジャーキーの製造・販売です。商品が生まれたきっかけから、現在までの道のり、そして今後の展望を伺いました。



従業員でもある愛犬のライ君と



大好きが組み合わさった「釣り×ペットのおやつ」という新規事業
 

- 釣り好きが高じての起業ということですが、どのような経緯で商品開発されたのでしょうか?

釣り歴は13、4年ほどです。釣り好きの夫の影響や以前の職場の近くに釣具屋さんがあったことから、釣りに行く頻度がだんだんと増えていきました。お店に通ううちにスタッフの方と仲良くなり、最終的にはその釣具屋さんで働き始めたことが決定打となって、釣りにどっぷりとハマりました。

釣りを始めて分かったのが、釣れる魚の中には調理しても美味しくない魚があるということです。例えば、ブリと言えば美味しいお魚ですが、高知で釣れるものの中には脂が少なくパサパサした食感のものもあります。とはいえ、釣ったお魚はどれもいただいた命なので、色々と工夫して食べたり、焼いたものを愛犬のライに食べさせたりしていました。人間には脂の足りない魚でも、ライはすごく喜んで食べてくれました。

それまでもライのおやつとして、お肉を乾燥させた自家製ジャーキーを手作りしていたことがあり、美味しそうに魚を食べる姿を見て、魚のジャーキーを作っても美味しく食べてくれるのではないかと考えました。試しに作ってみると、大当たり。とても美味しそうに食べてくれました。

このことをきっかけに、大好きな釣りと大切なペットのためのおやつ作りという二つを繋げられないかと考えるようになりました。
 


写真:上杉さんの釣った魚。現在はなかなか釣りに行く時間が取れず、2週間に一度くらいの頻度になってしまっているそう。

 

- 事業としてのスタートはどのようにされましたか?

試作を重ねた末に、2021年頃から「Mummy」というペットのおやつブランドを立ち上げ、自分で作った魚や鶏肉をジャーキーにして販売し始めました。とはいえ、実際はご近所さんや友人などにちょこちょこと販売するくらいで、趣味の範疇を超えるものではありませんでした。ちなみに、「Mummy」というのは、英語でミイラのことです。食材をカラカラに乾燥させているところから、名づけました。また、家族とも一緒に事業を進めたいという思いから、パッケージのデザインは妹にお願いしています。主な食材である魚と鶏が包帯でぐるぐる巻きにされたミイラになっていて、お気に入りのデザインです。

このように自分の手の届く範囲で事業を始めたのですが、事業を進めていくうちに、売上の一部を保護犬や保護猫の活動をしている団体に寄付したいと思うようになりました。しかし、寄付するためにはしっかりと売上を確保しなければなりません。そのためにはどうしたらよいだろうと考えるようになりました。

 

写真:Mummyのジャーキー

 

 

自分の強みを正しく理解し、今後の目指す事業の姿が明確に
 

- こうちスタートアップパーク(以下、KSP)の講座を受講されたきっかけを教えてください。

色々と調べる中で、高知の食材でペットフードを作っている方とSNSで繋がり、その方にKSPを紹介していただきました。KSPでは、2022年に開催された「起業直前集中メンタリング」を受講しました。

事業としては小さくスタートしているものの、何をしたらいいか分からない、何を質問していいかも分からないという状況でした。受講中は、メンターの方から商売の基本からさまざまな事例を教えていただき、また相談できる方々を紹介していただきました。コースが終了した今も、何か困ったことがあれば相談できる、信頼できる方々と出会えたことは大きな財産です。



 

- 受講する中で、何か変化はありましたか?

売上を増やしたい、事業を大きくしたいという思いで受講しましたが、自分の強みや課題を明確にしていく中で、そこがゴールではないということに気づけたのも大きな収穫でした。

当初、私の強みは「無添加の手作りおやつ」ということだと考えていました。しかし、同様の取り組みは県内ですでに何社かあり、知れば知るほど自分の強みが何なのか分からなくなってしまっていました。しかし、釣り仲間との繋がりから鮎などの高級な魚を市場の価格よりも安価に入手できることや、なかなか市場に出回らない高知県産の珍しい魚種が手に入ることなどが私にしかできないことだと気がつきました。

それらは供給量が不安定で、なおかつ取引価格が変動するため大量生産には向きません。それならば、「規模は小さくとも、お客さんに満足いただける商品を私にしかできない形で届けられれば良いのではないか」という考えに至ります。自分の目指す成長の形が明確になった経験でした。

 

写真:鮎の乾燥前。乾燥させることでここから1/5程のサイズに小さくなってしまうが、その分旨味が凝縮されている。

 

Mummyの商品を1人でも多くの人に届けたい

 

- 「Mummy」の商品はどこで購入が可能ですか?

「道の駅なかとさ」やペット用品の販売店、そして個人のカフェや居酒屋、鍼灸院など商品の良さや寄付をしたいという思いに賛同して取り扱ってくれているお店で販売していただいています。少しずつ取り扱い店舗は増えていますが、早急に取り組まなければならないのが、オンラインショップの開設です。現在は、取扱店での販売と合わせて、LINEでお客様からお問合せいただき、販売しています。今後は、県外のお客様にもお届けできるよう、オンラインショップを開設し、お客様を増やしていけたらと思っています。

実はすでにアカウントは開設しているのですが、商品写真の撮影が苦手で開設作業が止まってしまっています。そこは何とか克服して、オープンまで漕ぎ着きたいです。

 


写真:商品のラインナップは随時変わるが、魚に加えてはちきん地鶏や猪の商品ができたことで、安定した生産が可能となった。



- 今後の展望を教えてください。

現在は、自宅で商品の加工をしていますが、今後1〜2年のうちに「Mummy」の加工場が欲しいと考えています。生産性を上げて、少しでも多くの商品を作りたいです。

さらに遠い未来になるかも知れませんが、いつか生まれ育った土佐市宇佐にある実家を改装して加工場兼小さなショップを持てたらなと思っています。ドッグランを併設したいな、カフェスペースもあったらいいな、など夢は膨らみます。

その夢を実現するためにも、今できることをコツコツと積み重ねていきたいと考えています。

 

 

ジャーキー屋Mummy

Instagram:@mummy_jerky


文責/長野春子