~株式会社アッシェ 須江 勇介さん~

人と違うことを選ぼう マーケティングの力で社会の課題を解決

 

スーパーマーケットで、賞味期限や消費期限が迫った商品に、リスのような見た目のキャラクター「もぐにぃ」のシールが貼られているのをご覧になったことがある方も多いのではないでしょうか。実は、この食品ロス削減プログラム「もぐもぐチャレンジ」を企画したのは、高知県のマーケティング会社。
今回は、高知にUターン後、デジタルマーケティングを中心とした事業を展開されている株式会社アッシェ代表の須江さんにお話を伺いました。なぜ、デジタルマーケティングの会社が食品ロス削減に取り組んでいるのでしょうか。そこには、「明日の世界を変えていく」という企業ビジョンに基づいたストーリーがありました。

 

 

 

“「人と違うことをする」が原点”

 

- 須江さんがITの仕事をしようと思ったきっかけは、何だったのでしょうか。


韓国への留学がきっかけです。小学校高学年の頃に関東から高知に引っ越し、進学校の中学校に通っていたのですが退学し、その後は何もしていませんでした。そのため、このまま普通に大学に行くのは大変だなと思い、「人と違うことをしよう」と大検を取って、留学を志したのです。
実は父親も起業家で、父の姿を見て、小学生の頃から「人と違うことを選ぶ」というアイデンティティが根底にあったのかもしれません。
とにかく留学がしたかったので、高知からアクセスが良く、なるべくコストがかからない場所として選んだのが韓国でした。まだ「冬のソナタ」ブームよりも前で、日本人が韓国文化になじみが薄い時代だったこともあり、特に何かを学ぶ目的があったわけではなかったですね。
そして、留学先のソウルで「PCバン」(日本のインターネットカフェに近い施設のこと)に出会ったことが大きな転機でした。当時のソウルではコンビニよりも多くのPCバンがあり、そこで24時間ゲームなどをして過ごすという文化がありました。
韓国は圧倒的にインターネットやITが進んでいて、高知ではインターネットの概念すらない時代に、大学の先輩たちがパソコンの部品を買って、自分で組み立ててゲームをするという世界が衝撃的でしたね。そこで、先輩たちと一緒に遊んでいるうちにITについて学んだという感じです。

 

 

- 留学後、どのような経緯で起業されたのでしょうか。


韓国へ留学して1年後くらいに、家庭の事情で日本に戻ることになったのです。東京で就職してインフラエンジニアとして働いていましたが、もう一度、韓国に留学したいという思いは持ち続けていました。
しかし、東京で働いていても留学資金はなかなか貯まりませんでした。そこで、資金を作ろうと高知に戻ったのですが、ITの仕事は高知になく、就職先に悩んでいました。ちょうどその頃、妻に出会い、妻の「会社を作ったら」という一言で起業を決意した、という経緯です。
そして、幼なじみ3人と会社を立ち上げ、ポータルサイトなどを作る事業を21歳でスタートさせました。しかし、当時はスマートフォンもない時代なので、ホームページが必要な会社なんてありません。さまざまな事業に挑戦しましたが、なかなか上手くいかなかったですね。

 

 

“人との縁でつながった仕事”

 

- 起業後はご苦労もあったとのことですが、その後、どのように事業を展開されていったのでしょうか。


最も大きいのは「人の縁」です。起業した会社の営業担当が、あちこちで「ITに関することなら何でもやります!」と言っていたら、高知県内のある社長から急に連絡がありました。
これからホテルはネット予約の時代になるだろう、ということでWebサイトを作る仕事の依頼を受けたのです。当時、ネット予約のサイトを作っている業者は他になく、それを機にさまざまなホテルに縁が広がり、軌道に乗っていきました。
その後、スマートフォンが普及し、ネットショッピングなども一般的になって、Webサイトを作ったりWeb広告を手掛けたりと事業が広がっていきましたね。
その他にも、さまざまなご縁でつながった仕事がたくさんあり、起業家として大切なのは「信用」だと感じています。

 

 

- 現在注力されている、楽しみながら食品ロス削減に参加できるプログラム「もぐもぐチャレンジ」はどのようにスタートされたのでしょうか。


恵方巻の大量廃棄に関するニュースを見て、食品ロスを減らしたらもっと利益が出るんじゃないかと思ったことがきっかけです。
すべてのきっかけは「課題解決」であり、ホテルのネット予約のWebサイトを作った時から一貫しています。その前は、自分がやりたいことをやって失敗していましたね。
食品ロスが起こる主な原因の一つとして、「できるだけ賞味期限、消費期限の長いものを買いたい」「いつでも十分な量のお惣菜を買いたい」といった消費者の心理があります。このような消費者の期待に応えるためには、それだけ大量の商品を並べ続けなくてはなりません。その結果、商品を売り切ることができず、廃棄せざるを得なくなってしまうのです。
消費者のことを考え、食品ロスが生まれてしまっているわけですが、これからの時代には合わないのではないかと考え、「もぐもぐチャレンジ」を考案、県内のスーパーマーケットに提案しました。「もぐもぐチャレンジ」は、スーパーマーケット側が、賞味期限・消費期限が迫った商品にシールを貼ります。消費者はこれらの商品を購入、シールを集めると寄附やイベント参加ができる仕組みです。食品ロスが減ることで社会貢献ができるのはもちろん、企業の利益も向上します。実は、1%のロスを減らすだけでも利益に大きく関わるんですよ。
この「もぐもぐチャレンジ」はクチコミで広がり、関東や北海道のスーパーマーケットチェーンなど、全国でも導入されています。

 

 

“今後は高知県の人口減少を解決したい”

 

 

- 須江さんは、高知県で起業家の育成・支援をしている団体「高知イノベーションベース(KOIB)」の副委員長としても活動されていますよね。どのような経緯で参画されたのでしょうか。


きっかけは、起業家の先輩から紹介された場での出会いでした。ちょうどこの頃、若手起業家の世界的ネットワークであるEO(Entrepreneurs' Organization)の中四国支部が2021年1月に設立され、EOのメンバーだった彼らと共に、地元の高知への貢献を目的に「KOIB」を立ち上げることになりました。
そして、「KOIB」の縁で2023年度からマーケティングを学ぶために大学院に通い始めました。事業と両立しつつ学ぶのは大変なことも多いですが、一生懸命やること、積み上げることの大切さを実感しています。

 

 

- 今後は、どのようなことに取り組もうと考えられているのでしょうか。


「もぐもぐチャレンジ」は徐々に広がりつつあるものの、導入は全国315店舗に留まっています。より多くの店舗に導入いただくことで、日本の食品ロスの削減に貢献していきたいと考えています。
また、高知県の人口減少の解決も重要な課題です。高知県では人口流出が叫ばれていますが、県外に進学した学生の半数以上が地元に帰りたいと考えているというデータもあります。
しかし、帰らない理由は魅力的な企業がないから。そこで、高知の企業の魅力を発信する、知ってもらうきっかけづくりをするなど、デジタルマーケティングや企業ブランディングの領域でやっていきたいです。

 

 

- 高知で起業して良かったと思われる点は、どういったことですか。


「№1の法則」だと思っています。東京で起業して№1になるのは難しいですが、高知だと1番を取るハードルは下がります。
ビジネスにおいて、1番になるというのは重要なこと。価格決定権も得られますし、高知で1番になると、全国のトップクラスの経営者と同等に接することができます。
そして、高知では幅広い世代と交流する機会も多く、さまざまな人脈が広がるのも良いところですね。高知での起業はチャンスが多いと感じています。

 

 

- 最後に、これから高知で起業したいと考えている方へのメッセージをお願いします。


「できるかできないかではなく、やるかやらないか」だと思っています。まずは、やってみることが大切です。失敗しても必ず糧になります。
そして、一番大切なのは「仲間選び」です。起業準備はビジネスモデルを考えることではありません。最初に考えたビジネスモデルはいずれ変わっていくものです。素敵な仲間をどう見つけるかが起業準備なのではないでしょうか。
また、人と違うことをやる、大手企業がやらないことを見つける、という視点も大切ですね。

 

 

株式会社アッシェ
https://ashe.co.jp/

 

もぐもぐチャレンジ

https://mognny.fun/

 

一般社団法人高知イノベーションベース(KOIB)

https://koib.jp/

 

文責/是永裕子