~株式会社吉本3Dファクトリー 吉本 大輝さん~

一生好きな仕事がしたい!高知から発信する3Dエンターテイメント

 

3次元データをもとに立体物を作り出せるフルカラー3Dプリンター。今後、さまざまな用途での広がりが期待されている、この3Dプリンターを活用した事業を展開する会社が高知市にあります。
今回は、神戸と高知で二拠点生活を送りながら、3Dによるフィギュアなどのデザインから販売までをワンストップサービスで行う吉本さんにお話を伺いました。

 

 

 

“「一生続けられる仕事」との出会い”

 

- 吉本さんがアートを仕事にしようと思ったきっかけは、何だったのでしょうか。


子どもの頃から手先が器用で、テレビを見ながらずっと工作などをしていました。体を動かすことも好きで、空手にも真剣に取り組んでいて、ずっと何かをしている日々だったと思います。
しかし、高校の頃何も打ち込むことがなくなった時、ついついサボってしまう日々になり…。そんな時、高校の担任の先生から、芸術大学が向いているのではないかと言われました。
ものづくりは好きでしたが、美術でご飯を食べていけるのか不安もありました。芸大に進学することに、正直ピンと来なかったものの、『このまま何となく大学に行ったら、ずっとこの生活の延長になる』という危機感は持っていました。
それなら、ずっと好きだった“作ること”を仕事にしようと思い、美術の先生に相談。芸大に行くためには画塾に行ってデッサンの勉強をしなければいけないことを知りました。先生から、おすすめの画塾を教えてもらい、その日のうちに体験入学し、その場で入会しました。
通い始めた画塾で、芸大を出て学校の先生をしている方やイラストレーターとして成功している先輩方に出会ったのも転機です。『美術で食べている人が実際にいるんだ』という発見がありました。そこで、『ものづくりを極めれば何とかなる』という希望が見えたと思います。

 

 

- 進学した大学では油絵を専攻されていたそうですが、どのように3Dと出会ったんでしょうか。


入学当初はアニメの背景美術の仕事がしたくて油絵を専攻していました。しかし、当時入社を志望していたアニメ制作会社が解散してしまったこともあり、油絵にこだわらなくてもいいのでは、と考えるようになりました。
そこで、もともと好きだった立体の制作にも挑戦してみようと粘土の作品を作り始めたら、これが楽しかったんです。大学の油絵の先生に作品を見せたところ、立体作品を作ることに対して背中を押してくれました。
しかし、立体物を作る仕事というのは選択肢が少なくて。そのなかで何をしようかと考えて、精巧に作る、リアルに作るという仕事がやりたかったことからフィギュアにたどり着きました。
そして、ちょうどそのタイミングで開催された『ワンダーフェスティバル』というフィギュアのイベントに参加、「これからのこの業界は3Dが主流になる!」と直感し、次の日には3Dのソフトを購入していました。その後は独学で勉強、この道に進みました。

 

 

- 吉本さんのお話を伺っていると、大学受験の際の画塾に入会したエピソードしかり、3Dとの出会いしかり、すぐに行動されていることが印象的ですね。


確かにそうかもしれません。思い立ったらすぐに行動しますね。我慢できない…!3Dとの出会いの際も『1日でも早く覚えた方がいいに決まっている』という気持ちでした。
作る仕事を続けるためには、常に自ら動く必要があります。それも含めて楽しいな、と思いますね。

 

 

“「無限に働ける会社」を目指して”

 

- 大学卒業後は会社員として就職されたそうですが、なぜ起業を志されたのでしょうか。


約1年9か月、企業で働いていました。働きやすい会社だったのですが、自分自身、会社員として決まった時間の中でものづくりをするというのが向いていなくて。働き足りないという気持ちを感じていました。
そこで、仕事が終わって帰ってからも、自分で仕事を取ってきて働いていたんです。そんな生活を続けるなか、もっと自分のやりたい仕事をしたいという思いが高まり、起業しました。
どこまで自分ができるのか一度試してみたいという思いもありましたね。
僕は、寝ている時間以外、何かを作り続けていることが苦ではありません。『無限に作り続けられる会社』を目指して起業しました。
また、中小企業診断士の資格を持っている父親に、学生時代から、自分の作品もよく見せていました。父親とのやり取りの中で『自身の作った物でお金を稼ぐ』までの過程を漠然と問われていたというのも大きいかもしれません。作ったものをどう価値に変えるか、という思考は持ち続けていたと思います。

 

 

- 起業後は、どのような事業内容のお仕事をされているのでしょうか。


いちばん最初は神戸で『合同会社吉本アートファクトリー』を立ち上げました。そこでは、フルカラー3Dプリンターを活用し、フィギュアを金型に頼らずに量産しない形で、オンデマンドで作っています。
たとえば、美術館や水族館のミュージアムショップなどは、オリジナルグッズを作りたくても体力的に厳しく、どこにでもある一般的な商品を仕入れるしかないという状況です。そこで、それぞれの特色を生かしたオリジナルのフィギュアや立体物を小ロットで作ることのできるサービスなどを行っています。

 

 

- 実際に起業するにあたって、苦労された点などはありますか。 


やはり“人集め”ですね。スタートはひとりでした。プラモデルやフィギュアの3Dのデータ制作を行う会社はまだまだ少ないため、当初から仕事はいただけていました。その仕事ですこしずつ利益を出し、機材を購入し、人を雇い、というのを繰り返して今に至ります。

 

 

“「高知アニメクリエイター聖地プロジェクト」がきっかけで二拠点生活がスタート”

 

 

- 神戸で順調に事業を拡大されてきた吉本さんですが、なぜ高知にも拠点を持つようになったのでしょうか。


高知信用金庫さんと高知県などが行っている『高知アニメクリエイター聖地プロジェクト』を知人から紹介され、参画したことがきっかけです。
『高知アニメクリエイター聖地プロジェクト』には大手出版社も多数参画していて、共に新しいプロジェクトを進められます。私自身、アニメに関わる仕事をしているので、コンテンツの一次産業を担う人と直接会えるという環境は、非常に魅力的です。
このプロジェクトに参加するなかで、高知で起業することになりました。神戸の会社はスペースが狭く、商品を量産したくてもできないという悩みがあったため、高知で『株式会社吉本3Dファクトリー』を設立し、神戸で請け負った仕事の製造の部分を行っています。

 

 

- 今後は、どのようなことに取り組もうと考えられているのでしょうか。


現在は製造部門のみですが、ゆくゆくは高知でも、3Dデータ作成やアクリル系グッズのデザインから製造まで一貫して行える仕組みを作りたいと考えています。
また、個人のお客さまからの受注もできるよう、見積りから3Dデータの作成、決済までを行えるシステムも構築中です。これができると、仕事の幅も大きく広がると考えています。

 

 

- これから高知で起業したいと考えている方、また、芸術の道で起業を志す方へのメッセージをお願いします。


高知は、“作る”環境が整っていると思います。他県へのアクセスが不便な場所だからこそ、高知県内でさまざまなことがコンパクトにまとまっているのも良い点です。
ものづくりはビルがたくさんある場所で行う仕事ではなく、自分と向き合いながら進めるもの。だからこそ、高知はものづくりには良い環境なのではないでしょうか。

 

 

 

 

株式会社吉本3Dファクトリー
https://y3d.y-artfactory.jp/

 

文責/是永裕子