〜Tangled 岩﨑姫無さん〜

クラウドファンディングで資金調達し、四万十町の食の豊かさをPRするお店をスピード開店

 2023年4月に四万十町地域おこし協力隊に着任し、同年9月に餃子屋「Tangled(タングル)」をオープンさせた岩﨑さんにインタビューさせていただきました。移住から起業までの期間が短かったにも関わらず、クラウドファンディングを活用するなど、できる準備をしっかりと行ってのスピード開店。起業準備や今後の展望についてお話を伺いました。

 

 

自分が本当にやりたいこととは?将来について考えた高校時代

- 岩﨑さんは現在21歳ということですが、どういった経緯で四万十町の協力隊となったのでしょうか。

 東京で生まれ育ち、いわゆる進学校といわれるような高校に通っていました。コロナ禍に授業がすべてリモートに切り替わるなど社会の大きな変化を感じる中で、自分の将来について本気で考えるようになりました。なんの疑問も持たず考えていた大学進学ですが、自分と向き合っていると、今の私には大学に行く”目的”がないことに気がつきました。大きな不安を抱えながら「大学に行かない」という選択をしました。

 そんな時、母から教えてもらったのが、会員制コミュニケーションサロン「堀江貴文イノベーション大学校(以下、HIU)」でした。加入してみると、たくさんの大人たちがHIUを通して仲間を募り、チャレンジしていく姿があり、自分も積極的にこの活動に参加するようになりました。

 HIUでの活動とアルバイトに勤しむ生活を続けて2年ほど経った頃、目の前の「やりたいこと」に熱中して毎日楽しくとにかく行動してきたけど、結局何がやりたくて何を生業にしていきたいのかわからなくなってしまいました。そして考えたのが、一度、暮らしている環境をガラッと変えてみてはどうだろうということでした。
 

 

フットワーク軽く移住先を即決するも、頼りにしていた人から止められる

- 移住先を検討する中で、なぜ四万十町になったのですか?

 2022年10月頃、HIUを通してできた全国にいる知人たちに移住先を探しているという話をしていました。そんな中で、親身になって相談に乗ってくれたのが、四万十町に移住して「神果卵(しんからん)」という高級オーガニック卵を事業承継された山内嘉文さんでした。山内さんのの話を聞き、「高知に面白い人がいる!来月から行きます!」とすぐにでも移住をする気持ちでいることを伝えました。養鶏場でお世話になれるものと安直に考えていたところ、想像に反して山内さんに止められてしまいました。「ちょっと待って!いきなり来ても、住むところも仕事もないよ。」と言われ、一旦冷静になりました。そこで山内さんが教えてくれたのが「地域おこし協力隊」制度です。地域おこし協力隊なら、仕事とやりたいことを両立できると思い、四万十町の協力隊に応募することを決めました。

 応募前に四万十町を3度ほど訪れ、山内さんの養鶏場を手伝いながら地域のことを知りました。その後12月頃に募集が出て、翌月東京で開催された「JOIN 移住・交流&地域おこしフェア」にも参加し、四万十町役場の担当者とお話しして、最終的に応募を決めました。

 その後、無事採用となり、四万十町に引っ越してきたのは2023年3月です。4月からは移住・定住支援の担当として、16名の地域おこし協力隊の仲間とともに活動しています。




移住から半年も経たないうちにお店をオープン!驚きの行動力で、自らの道を切り拓く
 

- 地域おこし協力隊として四万十町に移住をして、その後どうして起業することになったのでしょうか。

 オープンしたお店の物件と出会ったのは、移住して間もない2023年4月。四万十町役場の向かいにあるこのお店に、山内さんと一緒に食事に訪れた時のことでした。前オーナーから5月に別の場所に移転すること、そして次のオーナーを探していることを聞きました。「じゃあ私がやります」とその場で返事をしたことがすべての始まりです。もちろん、その時点では何をするかは決まっていません。

 移住から間も無かったこともあり、役場の上司からは「早すぎるんじゃないか?」と心配されました。それでも、一番モチベーションの高い時に行動したいという気持ちや、後悔の無いように人生を生きたいという気持ちから、迷いなく突き進むことを決めました。まずは9月にオープン日を定めて、そのゴールに向けて動き出しました。

 私が四万十町に来て、まず感動したのは食べ物の美味しさでした。こんなに美味しい食材が地元で育てられていて、地域の人たちは日々当たり前にそれを食べている。この豊かさを外に発信したいと思い、地域の特産品である生姜やニラ、豚肉を使った「餃子」を看板商品にすることにしました。

 また、店名のTangled(タングル)は、「絡む」という意味です。このお店を通して、年齢や性別など関係なくいろんな人が交流し、化学反応が起きて欲しいなという思いを込めています。

 


 


クラウドファンディングで資金を調達し、スピード開店を実現する

- 4ヶ月間という短い期間でしたが、開店準備はどのように進められましたか?

 お店をやると決めた時からクラウドファンディングに挑戦したいということは決めていて、HIUでクラウドファンディングについて詳しい方との繋がりもあり、スピード感を持って実行に移すことができました。クラウドファンディングでは移住した経緯や思いを伝え、なんとか目標額150万円を達成することができました。それが大きな支えとなり、開業に際しては自己資金とクラウドファンディングの寄付金ですべて賄うことができました。

 
資金準備とともに商品開発も行い、試作品の餃子をたくさんの人に食べてもらいました。しかしながら料理は不慣れで、包丁を扱うところから取り組まなければなりませんでした。看板商品である餃子はなんとかオープンに間に合わせることができましたが、餃子の味はオープンから現在まで進化を続けていて、これからも変わっていきます。お客さまとのコミュニケーションの中で、柔軟に変化していければいいなと考えています。

 
経営のノウハウについても不慣れな部分が多く、山内さんや地域おこし協力隊の先輩で経営に詳しい方などからアドバイスをたくさんもらって勉強しています。 
 
 
また、移住したタイミングで色々と調べている中で、「こうちスタートアップパーク(以下、KSP)」の存在を知り、すぐに会員登録をしました。その後、KSPの起業コンシェルジュに出会い、KSPの交流会にゲストとして参加をさせてもらいました。多くの人の前で話をするのは初めてだったのでとても緊張しましたが、私のこれまでの経験や事業内容を知ってもらうきっかけになり、大変良い機会をいただいたと思っています。KSPにはたくさんの講座がありますが、専門家や先輩起業家などと交流ができるのも魅力のひとつだと思います。これからも初心を忘れずに、多くのことを学んでいきたいと思っています。
 


 


四万十町の食の豊かさを地域外へPRしたい

- 今後、挑戦したいことはありますか?

 現在、お店を訪れるお客さまのほとんどが町内の人です。お店は「にぎわいの場」として継続しつつ、今後は県外の人にも届けられるように冷凍餃子の開発を行いたいと考えています。完成した餃子は、ふるさと納税の返礼品としてお届けすることが目標です。

 
冷凍餃子の販売を行っていくことで、当初の目的である四万十町食材の素晴らしさを県外の人にも届けたいという思いを実現できるのではないかと考えています。

 
冷凍商品の開発に際しては分からないことが多く、まだまだ苦戦中です。ですが、幸い四万十町は起業支援制度や相談窓口などが充実していることに加えて、地域おこし協力隊で起業した先輩たちも多くいる土地です。そういった方たちを頼りにさせていただくことで、今持っている疑問やこれからの不安を解決していけるものと心強く思っています。

 

 

Tangled

住所:高知県高岡郡四万十町琴平町15−27

Instagram:@tangled_shimanto


文責/長野春子