~株式会社Practice/高知大学大学院 柳原 伊吹さん~

地方でもインターンシップを!高知の学生の未来をつなぐ熱い想い

 

2024年2月10日に最終審査会が開催された「高知県スタートアップビジネスコンテスト『Kochi Start-up Pitch』」。このビジネスプランコンテストで企業賞を受賞されたのが柳原 伊吹さんです。
柳原さんは、高知大学大学院で学生生活を送りながら、人材育成や地域活性化に関する活動を個人でも積極的に行っており、2024年3月に起業し、自らの事業をスタートされました。
柳原さんが始めたビジネスとは、一体どのようなものなのでしょうか。そこで今回は、柳原さんにじっくりお話を伺いました。

 

 

“「人材育成をしたい」という想いの原点”

 

- 柳原さんが起業を志したきっかけは、何だったのでしょうか。

 

2014年に『地方消滅』が叫ばれ始め、2016年に『地方創生』がスタートしました。その中で、地方で活躍する行政職員や市民団体、起業家の姿に触れ、自分もそうなりたいと考えるようになりました。
そこで、高校在学中からさまざまなセミナーや、県や大学などが主催しているイベントに参加したり、直接話を聞いてみたい方には自らアポイントメントを取って会いに行ったりしていました。そのような経験から、ビジネスを通して地域の問題を解決したいと考えるようになり、大学進学時から起業という選択肢はあったと思います。

 

 

- 大学院生として勉強される中で、どのように起業につながっていったのでしょうか。

 

現在、高知大学の大学院で地域協働学を専攻しています。そして学業の傍ら、出身地である香美市でNPO法人を立ち上げました。そして、現在も観光地の活性化に取り組んでいます。活動の中で、町づくりのプロジェクトの依頼が来ることがあるのですが、その案件をNPOに参加してくれている大学生に依頼するという流れがありました。
これは、普通のアルバイトでは経験できないことで、学生にとって非常に有意義なことです。こういったきっかけをもっと広げていきたいな、と考えていたところ、「高知県スタートアップビジネスコンテスト『Kochi Start-up Pitch』」の開催を知り、エントリーをしたという経緯です。
これを機に起業に至りましたが、すべて根底にあるのは『人材育成をしたい』という想いで、これを軸に活動をしています。

 

 

- 「Kochi Start-up Pitch」で発表されたビジネスプランは、どういったきっかけで生まれたのでしょうか。

 

私が発表したビジネスプランは「高知出身・在学の学生と高知の企業をつなぐ長期インターン・学生向けプロジェクト掲載プラットフォーム」という県内の企業の採用やインターンシップを学生目線でブランディングしていくコンサルティングサービスです。昨今、特に大企業への就職を目指す学生の間では、インターンシップは避けて通れないものとなっています。そのため、地方の学生は都市部で開催されるインターンシップに参加することが当たり前という状況です。
それに加えて、コロナ禍でZoomが普及したことにより、地方の優秀な学生が就職活動で首都圏の大企業にエントリーしやすくなり、オンラインで参加できるインターンシップも増えました。
就職活動のツールも多様化していて、ポートフォリオをオンライン上に掲載し、企業とマッチングさせるサービスなどもあり、学生側に優しい就活となっています。
このように、デジタル化によって採用市場がどんどん変化していて、高知の学生が高知県に残るという選択肢がこれからますます減っていく心配があります。
そして、就職後の定着率を上げるために内定後も長期にわたりインターンシップを行っている会社もあり、学生生活の大部分をインターンとして過ごしている学生もいるのが現状です。
しかし、高知の企業にインターンシップはまだまだ浸透しておらず、県内の学生にも、なじみが薄い状況です。
令和5年度から国がインターンシップを後押しするようになったという背景もあり、高知の企業にもっとインターンシップを導入してほしいという想いで、ビジネスプランを立てました。

 

 

- 今の時代の就職活動において、インターンシップはこんなに不可欠なものとなっているのか、と驚きました。「Kochi Start-up Pitch」では「企業賞」を受賞されていますが、今回受賞されたビジネスプランについて、改めてお聞かせください。

 

例えば、高知大学の学生でいえば、8割が高知県外出身者です。その学生たちは、4年間高知に住んでいるのだから、これは大きなリクルート市場だと言えると思います。
企業には、大学生を単なるアルバイトとして募集するのではなく、インターンとして募集、受け入れることで、自分たちの企業を知ってもらうチャンスにつながるという意識を持ってもらいたいのです。
学生の立場で考えても、せっかく大学生活を送るなら、普通のアルバイトではなく就業体験としてリアルな現場を見て、そこに大学で学んだことを反映できたら充実したものになると思います。
このような想いから、企業にとっても学生にとっても良い関係を築くためのプラットフォームを作りたいと考えました。

 

 

“約1か月という短い期間で起業”

 

- 「Kochi Start-up Pitch」で受賞後、すぐに起業されたそうですが、苦労された点などはありましたか。

 

2024年の2月のビジネスコンテストから、約1か月後の3月に起業しました。起業にあたり、何から始めたらよいのか全くわかっていない状況だったのですが、そこで頼りになったのが、「高知イノベーションベース(KOIB)」(高知県で起業家の育成・支援をしている団体)の先輩方です。
実は、KOIBのメンバーの先輩起業家が大学院の同級生という縁もあり、私自身、学生委員として参画しています。その先輩から、さまざまなアドバイスをもらい、短期間での起業が実現しました。

 

 

- 起業後は、どのような事業内容のお仕事をされているのでしょうか。


高知市内にあるデジタルマーケティング会社と協業という形で、高知県内の企業にインターンシップを導入してもらうための取り組みを行っています。主な事業内容は、リクルートイベントの開催や、長期インターンシップの企画です。
しかし、高知県内の企業は、まだまだ『インターンシップとは?』という状況なので、今は、インターンの前にモニター調査を行うなど、企業と学生を繋げていくことを中心に行っています。
モニターサービスなので一般的なインターンシップ以上に会社の裏話など、興味深い話を聞かせてもらえる機会が多く、社長や人事課の社員などと直接話せるのは、学生にとって貴重な経験です。また、企業にとっては、学生からどう思われているかが可視化できる機会となります。

 

 

“企業と学生のネットワークをつくりたい”

 

- 今後は、どのようなことに取り組もうと考えられているのでしょうか。

 

学生を対象に『人材育成』を軸にこれまで活動してきました。今取り組んでいる事業はその中心だと言えますが、学生が学びが多い4年間を過ごし、お金ももらえて学生生活が充実するという枠組みを作りたいと考えています。
人材育成という視点では『環境をいかにつくるか』という発想の方が強いです。企業と学生のネットワークをつくる、それが自分の役割だと思っています。
『卒業後も高知に残って就職して欲しい』とよく言われますが、外に出ることは正直悪いとは思っていません。それより、外に出て都会で就職した優秀な学生が、気軽に相談をしたりアドバイスをもらったりできるネットワークを作っておくことが大切なのではないでしょうか。
今は、第二新卒や大人になってからのインターンシップにも興味を持っていて、何かできることはないかと考えています。

 

 

文責/是永裕子