〜シェアパーク flat 西川太悟さん、朋香さん〜
世界を旅した2人が創る、人がフラットに集う場所
バックパッカーとして世界を旅したご夫婦が黒潮町で始めた、ゲストハウス・レンタルスペースなどの複合施設「シェアパーク flat」。西川太悟さん・朋香さんご夫妻に、黒潮町に移住した経緯や起業までの道のり、そして今後についてお話を伺いました。
地域おこし協力隊をきっかけに黒潮町へ
- 現在、太悟さんは黒潮町の地域おこし協力隊として活動中ということですが、黒潮町に来る前はどのような活動をされていましたか?
もともと私たち夫婦は、2人ともバックパッカーです。世界を旅している中で知り合い、意気投合し、そこからは2人で世界の色々な場所を訪れました。日本に帰国後は車中泊をしながら日本中を旅したり、シェアハウスの運営に携わったりしてきました。シェアハウスを運営する中で気づいたのが、「シェアする暮らし」が私たちの価値観にフィットしているということでした。そこから、自分たちでコミュニティを作って運営したいという思いが強くなっていき、移住を考えるようになりました。
そうして、地域おこし協力隊の情報を様々見る中で出会ったのが、黒潮町の募集でした。ミッションは、映像制作、SNSでの発信です。世界を旅する中で、旅や私たち2人の様子をYouTubeに投稿していたので、「これだ!」と思い応募を決めました。
- 2022年6月に着任されてから起業までの流れを教えてください。
「シェアパークflat」の物件を内覧したのは、移住から1ヶ月後の2022年7月です。移住する前からシェアハウスの構想は頭の片隅に持っていたのですが、移住後すぐにこの物件に出会い、即内覧、その後夫婦会議を重ねて翌8月には契約を決めました。
物件は、元酒蔵で築130年、直近10年間は空き家という古民家でした。庭は荒れ放題、部屋の中にはたくさんの家具が残ったままで不安は大きかったですが、やると決めて協力隊の勤務時間以外の朝・夕、そして休日を使って、片付けや改修を進めました。
写真:片付け途中の室内(西川さん提供)
写真:埃をかぶりながら作業することも(西川さん提供)
写真:お庭Before(西川さん提供)
写真:お庭After。近所の方から譲り受けたという芝生が育っている
みんなが集い、つながる場所を作りたい
- この場所を活用して、どのような事業計画を立てられましたか?
当初は、シェアハウスをぼんやりと考えていました。ですが、シェアハウスは住んでいる人同士のつながりは深くなりますが、住人以外の方が使いにくいスペースになってしまうのではないかと思い、土地柄も考慮した上で、レンタルスペースやゲストハウスなどが混じり合った複合型の施設にしようという考えに行き着きました。
それから1年以上の間、ひたすら片付けや改修する日々を過ごし、やっとのことで「シェアパーク flat」がオープンしました。これといったオープン日は設けず、準備が整った場所から貸していくことにし、2023年10月からレンタルスペースとしての貸し出しが始まりました。最初のイベントは、地域おこし協力隊の仲間が企画した読書会です。おじいちゃんやおばあちゃん、そして若い子まで、色々な世代の方が本を持ち寄って読んでいる姿を目にして、こんな風に人が集って、つながる場所ができたんだと感慨深く感じたことを覚えています。
また、同時期に学習塾としての利用も始まり、地域の子どもたちの学びの場としても利用してもらっています。
写真:読書会の様子(西川さん提供)
写真:学習塾が行われる2階スペースには、学習机が並ぶ
民泊?それともゲストハウス?先輩起業家からのアドバイスが力になる
- ゲストハウスの準備はどのように進められましたか?
移住前にシェアハウスの立ち上げや運営などは経験していましたが、ゲストハウスの経営に関する知識はありませんでした。当初は「民泊」として営業しようと考えていましたが、営業日数など様々な制限があることが分かり、ゲストハウスとして営業することに切り替えました。それにより提出しなければならない書類が増えたり、消火器や防炎カーテンなど消防設備が必要になったりと、想定外の作業や出費が発生したことは少々痛手となりました。ですが、結果的にはゲストハウスとしたことによって使いやすく、未来の可能性が広がる施設づくりができて良かったと思っています。
宿泊は3部屋整備していて、オープン以来、日本国内はもちろん海外からのゲストにも利用いただいています。色々な文化が交わる、ごちゃ混ぜ感を楽しんでもらえれば嬉しいです。
また、施設の区分について悩んでいたタイミングで活用したのが、こうちスタートアップパーク(以下、KSP)の起業相談です。起業相談では様々な分野の先輩起業家に相談することができるのですが、私が相談したのは篠田善典さんと黒川慎一朗さんです。篠田さんは高知で複数の宿泊施設を、黒川さんは香川県で「うみの図書館」という複合施設を運営されています。お二人から宿を営業する上でのノウハウを事細かに指導いただき、自分たちが実現したい施設のイメージをしっかりと固めていくことができました。
頼りになるKSPの先輩起業家のお二人の他にも、地域おこし協力隊ネットワーク「とさのね」や個人事業主として活動している方々など、相談できる人が私たちの周りにたくさんいることが心強く、これから先も、次のフェーズに入る時など、たくさん相談をさせてもらいたいと思っています。
事業を安定させ、また2人で旅に出たい
- 黒潮町での暮らしや今後の展望について教えてください。
黒潮町は風通しがよく、いい意味で「余白」がたくさんあるなと感じています。例えば宿を例に考えてみると、まず黒潮町全体で宿泊施設数が少ない上、中心部エリアで見てみるとさらに数が足りていないのが現状です。古民家でやっているレンタルスペースは他に無いので、今後も「シェアパーク flat」にしか無いような面白いものを創っていけたらいいなと思います。
私たちが大切にしているスタンスとして、「実験的に始めてみる」ということがあります。まずは小さく始めて、その後は少しずつ改善していけばいい。もし失敗しても、それが成功の種になると考えてとりあえず挑戦してみる。このスタンスを実践するには、黒潮町という場所が適しているように感じています。
私は2025年3月末で地域おこし協力隊を卒業です。それまでに、ワークエクスチェンジでスタッフを受け入れるなどして、私たちが常駐しなくても施設が回るような仕組みを確立させ、2人でまた世界へ旅行に行きたいと考えています。そして、旅で得た経験を黒潮町へ持ち帰り、還元する。自分たちのキャパシティを広げながら、人生をより楽しむことが目標です。
シェアパークflat
高知県幡多郡黒潮町入野1518
Instagram:https://www.instagram.com/sharepark_flat/
文責 / 長野 春子