〜株式会社OUTER 竹内 洋平さん〜

高知から大海原に乗り出そう!都会と遜色のないコンテンツ発信を目指して

 


 
ゲームやアニメーション、エンターテインメントコンテンツなどは東京を中心とした大都市発のものというイメージを持つ方も多いでしょう。実は高知で、人気アーティストのミュージックビデオを手掛けるなど、最先端のカルチャーを発信している企業があるのです。
 今回は、デジタルテクノロジーを駆使し、ゲームやアニメーションなどのコンテンツ制作に関する事業を展開されている竹内さんにお話を伺いました。高知の若者と世の中のトレンドの関係など、興味深いエピソードが続々登場します。




クラブカルチャーとの出会い


 

- 竹内さんがエンターテインメントを仕事にしようと思ったきっかけは、何だったのでしょうか。

 高知県出身で、10代の頃から地元の音楽カルチャーに関わっていたことが、すべてのきっかけだと思います。マンガやアニメ制作を学ぶ専門学校に進学したのですが、そこでの勉強とは別に音楽も始め、自分で音楽イベントも企画するようになりました。
 アニメやマンガを作る世界と音楽カルチャーは全く違うもの。ジャンルの違うコミュニティで過ごした経験の延長が、今につながっていると感じています。そして、10代の頃に、HipHopやバンドのハードコアシーンと出会い、社会に自分の想いを伝えたいという強い気持ちがあったことも原動力になっているのかもしれません。
 専門学校卒業後は県内の機械メーカーに就職し、デザインの仕事をしていました。その後はデザイン会社などで働いていましたが、当時自分がイメージしているクリエイティブな仕事ではない部分も多く、やりがいはあまり感じていなかったと思います。
 父親が大工だったことから、『仕事は段取りが大切』だと教わって育ったため、多忙な仕事をしている中でも当時は定時で帰ることができました。そこで、自分の給料を使い、主催するイベントのハードルを上げていきました。

 

- 社会人になってからも、ずっと高知で過ごされていたのでしょうか。そこから、今に至るきっかけなどはありますか。

 東京はもちろん、海外にも行きますが、定住したことはなく、拠点はずっと高知です。高知にいながら、様々なイベントを主催してきました。
 その中で、当時まだ始まったばかりだったeスポーツに関するイベントを大阪で開催したのですが、フタを開けてみると集客できず大赤字…。しかし、お酒とゲーム、コスプレ、クラブイベントを掛け合わせるというミックスカルチャーのイベントは珍しかったため、偶然会場に来ていた、株式会社TAMARIBA(東京に本社があるコンテンツを活用した企業のプロモーションなどを行う会社)の役員から声をかけられました。これがきっかけとなって、同じようなイベントを大々的に開催するようになったのです。
 そんな中、高知県から株式会社TAMARIBAに企業誘致の話があり、役員と共に高知で起業するという流れになりました。

 

- 最先端のカルチャーを地方から発信するというのは難しそうなイメージがありましたが、竹内さんのお話を伺っていると、すべてクリアされているように感じます。高知から切り拓いていくというマインドは、どうやって培われたのでしょうか。

 若い頃からライブハウスやクラブで過ごしてきたことが大きいと思います。いろいろな世代、バックボーンの人と知り合える『人種のるつぼ』のようなところで過ごしたことが良かったと思っています。そこに集まる人々は、学校の同級生と付き合っているだけでは、出会わない人ばかり。若い頃は吸収が早いので、環境は大切です。
 そして、海外のアーティストをイベントに呼ぶ場合なども、すべて自分のお金で運営していたので、集客に困れば『どうしてだろう?』と常に考えながら仕事をしていました。この経験も今に活きていると思います。

 


高知の若者に刺されば日本中の若者に訴求できる



 

- 実際に起業するにあたって、苦労された点などはありますか。

 資金繰りです。起業した当初は海外のトップレベルのアーティストも呼んで一緒に仕事をしていたので、特殊な設備投資やホスピタリティー環境の構築などで予期せぬ出費もかかり、マネジメントの課題などもありました。一方で、高知に世界的なアーティストが来るというのは大きな話題になりましたね。

 

- 起業後は、どのような事業内容のお仕事をされているのでしょうか。

 株式会社TAMARIBAの子会社として、ゲームやアニメーションの制作などを行っていて、有名アーティストのミュージックビデオも手掛けています。
 事業内容のターゲット層が18歳前後~20代前半なので、20代の子が今、何を考えているか?という視点は重要。そのために、新卒採用を積極的に行っていて、帯屋町にイベントスペースも作りました。
 イベントスペースには大学生や音楽を志す若者、高知の音楽好きの大人、県外からのお客さまや外国人などさまざまな人が集っています。そこでいろいろな交流があり、現在の社員の中にも、もともとはイベントスペースのお客さんだった者もいるんですよ。

 

- 高知でコンテンツ制作をするにあたり、課題などはありますか。

 実は、高知の若者に訴求できれば、東京でここの層まで届くだろうということがわかります。東京で流行っているものは尖り過ぎている部分もあるので、高知を押さえると俯瞰的な観点から東京で提案しやすくなるのです。
 例えば、東京では家族みんなで朝の情報番組を見て過ごすという光景は見られなくなっています。しかし、高知ではまだまだ「繋がり」の習慣がある。「繋がり」の中でより多くの人に刺さるものが何か、高知でテストできるというわけです。
 コロナ禍が終わり『やっぱり東京』という風潮は確かにありますが、それを避けたいという想いを持って高知でビジネスをしています。尖っている音楽に反応する若者は、東京にいても高知にいても同じセンスを持っていいます。高知には若者がいないとよく言われますが、自社でイベントをすると何百人も集客できます。場所と熱量があれば、集まるのです。



経営者は船長のような存在



 

- 今後は、どのようなことに取り組もうと考えられているのでしょうか。

 東京ではどこであっても、知らない誰かとつながれるけれど、高知では社外の人とつながれる場所がありません。そのため、大規模な音楽イベントを開催するなどして、若い子が集まれる場所を作りたいと常に考えています。今年11月3日には、香南市天然色劇場で野外音楽イベント「W.A.V.E」を開催し、1000人近くの若者が集まりました。 
 そこに行けば『イケてる』と思ってもらえる場があれば、おのずと人は集まるものです。高知には人材がいないとよく言われますが、育てようとしていないように感じています。人材が育つ場を作り、高知から文化や芸術の分野で世界を目指していきたいです。




 

- これから高知で起業したいと考えている方へのメッセージをお願いします。

 高知はブルーオーシャンのため、目的があれば市場を開拓できます。しかし、船長(経営者)として大海原に出るには知識が必要です。セミナーを受講したり、本を読んだり、勉強することはとても大切。経営をしていると予想外のこともたくさん起きるので、しっかり準備した上で、経営者としてのプライドは持ち、臨機応変に行動することが大事なのではないかと思います。また、強いメンタルを持ってトライアンドエラーを繰り返すというのもポイントです。一言で言うなら、『船乗りになりなさい』ではないでしょうか。

 

 

株式会社OUTER

・住所:香美市土佐山田町旭町2-2-22

・HP:https://outer-lab.net/

 

文責/是永 裕子