〜合同会社土佐べる 村上友菜さん・加藤和さん〜
小さな町の大きな魅力!汗見川エリアに建つゲストハウス「一軒宿さめうら」
嶺北地域の本山町を流れる清流・汗見川(あせみがわ)。透き通った青が美しく、眺めるだけでなく安全に川遊びができることから、近年人気が高まっています。その汗見川から徒歩1分の場所に建つのが、「一軒宿さめうら」です。今回は、こちらの宿を運営する合同会社土佐べる 代表の村上友菜さんと共同経営者の加藤和さんにお話を伺いました。
本山町の魅力を伝えたいという気持ちで意気投合
写真左から村上さん、加藤さん
- お二人とも移住者との事ですが、どういった経緯で高知に移住して来られたのでしょうか?
加藤さん:
2006年に家族で本山町に移住してきました。移住のきっかけとしては、妻の健康面の理由が大きかったです。移住した当初は農業研修生をしていて、それから本山町にできた滞在型市民農園「クラインガルテンもとやま」の管理人といった仕事をしてきました。
村上さん:
私は、2021年に高知市に移住しました。前職は海外からのお客様も利用される客船のスタッフをしていました。コロナ禍で仕事がストップし、仕事をどうしようかと悩んでいた時に、高知にいる知人から畑を手伝わないかと誘いがあり、高知市へ移住して来ました。その後、家の前に畑がある暮らしが夢だったので、二段階移住制度を活用して本山町へ移住、クラインガルテンに入居しました。そこで、管理人をしていた加藤さんと知り合うことができました。
加藤さんは広い庭のある家でヤギや犬を飼っていて、私にとって「こういう暮らしがしたかった」という理想の先輩移住者です。色々な情報交換をする中で、田舎暮らしのリアルを教えてくれています。
- 宿を経営するというアイデアは、最初からお持ちだったんですか?
村上さん:
本山町、汗見川の魅力を知り、今度は自分たちで何かできないかと考えるようになりました。嶺北地域や本山町を訪れる観光客が多くいる一方で、宿泊先などが不足している現状を知り、前職での経験を活かした「宿」というアイデアが出てきました。
加藤さん:
私の方で、汗見川近くの空き家について家主の方からちょうど相談を受けていました。しかし、10年間放置されていた物件は庭の草木は生え放題で、中もボロボロ。それでも、立地や広さは宿をするにはぴったり!ということで、起業に向けて話が進み始めました。そして、2023年6月に「合同会社 土佐べる」を設立し、宿の開業に向けて本格的に動き出しました。
こだわりたいところには予算をかけても実現する
- 開業に向けて、どのようなことから取り組みましたか?
村上さん:
まず取り掛かったのが、庭の手入れと物件の片付けです。それが思った以上に大変でした。7月に物件を購入して、そこから使えるようになるまで週4〜5日のペースで取り組んで4ヶ月間かかりました。2024年1月に簡易宿所営業の許可が下り、オープンしました。
加藤さん:
慣れない作業ばかりで、壁の塗装作業も試行錯誤しながら行いました。自分たちでできるところは自分たちで行い、一部はプロにおまかせしました。
写真:生い茂っていた草木を整備した後(写真提供:一軒宿さめうら)
村上さん:
こだわったのは、水回りは最新の設備を整えて快適に利用していただくという点と、ベッド周りです。前職での経験から、快適に眠れる環境を整えるということにこだわりたいと考えていました。寝具の選定からこだわっていて、またシーツなどのベッドリネンは毎回クリーニングに出して、パリッとしたベッドメイキングでお客様をお迎えしています。
宿という特別感と快適な睡眠を提供するためには予算をかけ、抑えられるところは自分たちで作業するなどミニマムに抑えています。
- 起業に際しては、相談窓口や支援は利用しましたか?
村上さん:
会社設立前の2023年4月頃に、こうちスタートアップパーク(以下、KSP)の相談窓口を利用しました。その時に、創業時の資金は想定よりもかかることが多いということは伺っていて、試算していた予算を上方修正しました。また補助金に関する情報を教えていただいたり、自分たちにない視点から経営に関するアドバイスをいただいたりと、とても勉強になりました。
加藤さん:
KSPのアドバイザーから単価や事業規模に関してご意見をいただいたことで、自分たちが提供する価値について再考する機会になりました。利用したお客様が満足いく滞在となるように、寝具にこだわり、また清掃も徹底するなど細部にまでこだわっています。
写真:ピシッと整えられたベッドリネン
「本物」の体験を提供する場所でありたい
- 「一軒宿さめうら」の特徴は、他にもありますか?
村上さん:
広い庭には種類豊富なハーブ、季節の野菜や果物、お茶の木などが育っていて、泊まった方は宿の畑で収穫して、そこで採れたものを自由に食べていいことになっています。畑で本物の自然に触れて、植物が育っているところを見て、口に含むとどんな味がするのかなど体験や経験、本物を求めている方にこの宿を届けたいですね。ただ宿泊するだけでなく、うちの宿ではこんな暮らしができるということをアピールしていきたいと思っています。
写真:庭のマップを作成し、その時育っている野菜や果物を案内している
写真:「家の裏にお茶の木が生えている」というこの地域では当たり前の環境も、宿泊客にとっては特別な体験(写真提供:一軒宿さめうら)
加藤さん:
お客様の特徴でいうと、約半数が海外の方で、宿泊日数でみると7割ほどを占めます。海外からのお客様は四国を一つの「島」として捉えていて、四国の真ん中というこの場所は、とても便利な場所に思ってくれているようです。
- 今後の展望を教えてください。
村上さん:
「一軒宿さめうら」が、毎年訪れるふるさとのように滞在してもらえる宿になってほしいと思っています。そして、「リンゴの木が大きくなったね」「今年は柿があまり実ってないね」など、宿や畑が育っていく様子を私たちと一緒に見ていただきたいなと思っています。
加藤さん:
ゆくゆくは、汗見川という大きな魅力があるこの地区で「一軒宿さめうら」を含めて3軒の宿を開きたいと考えていて、すでに動き出しています。宿経営や宿スタッフが、地域の子どもたちの憧れの職業として将来の選択肢になることができたら嬉しいです。
土佐べる「一軒宿さめうら」
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文責 / 長野 春子